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【水中考古学へのいざない(16)】英国王の旗艦メアリー・ローズ号 威信かけた437年目の帰還

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【水中考古学へのいざない(16)】
英国王の旗艦メアリー・ローズ号 威信かけた437年目の帰還

エアダクトを使い乾燥中のメアリー・ローズ号(筆者撮影) エアダクトを使い乾燥中のメアリー・ローズ号(筆者撮影)

 †人骨が語る兵法

 回収された179体の人骨もまた多くを語る。最も完全な人骨は、身長約1・56メートルの力強い骨格の男性で、右肩が大きく盛り上がっていた。チューダー王朝時代(1485~1603年)、イギリスの少年たちは射手としての訓練を要求されていた。また、見つかった骨格の特徴から、重い弓を使用していた者、大きな銃の取り扱いにたけていた者など、船中での役割まで分析でき、ヘンリー8世の兵法を理解するうえでの重要な情報源ともなっている。

 「考古学ジャーナル226号」(ニュー・サイエンス社)によると、主甲板中央部の階段裏には小さな負傷者処置室があり、軟膏(なんこう)や当時の医術を示す外科用器具64種が残されていた。麻酔剤のなかった当時、負傷者にヘルメットをかぶせて、その上からなぐりつけて失神させ、苦痛をなくして施術したらしい棍棒(こんぼう)もあった。

 2016年5月、メアリー・ローズ号博物館がリニューアル・オープン。私の訪問時に、「来年にはエアダクトやガラス窓も撤去され、船と直接対面できるようになるわよ」と話してくれた年配の女性博物館員の言葉通り、現在は「ウェストン・シップ・ホール」と呼ぶ通路から身近に船体を見学できるようになり、英国の海洋史を知る上で欠かせない「人気スポット」となっている。

                   (水中考古学者 井上たかひこ)

 

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