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【正木利和の審美眼を磨く】美の使徒・魯山人が美しく刻んだ蘇軾へのオマージュ

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【正木利和の審美眼を磨く】
美の使徒・魯山人が美しく刻んだ蘇軾へのオマージュ

北大路魯山人「刻字屏風 赤壁賦」何必館・京都現代美術館蔵 北大路魯山人「刻字屏風 赤壁賦」何必館・京都現代美術館蔵

 その詩の内容をかみしめるように読み下し、一画一画、思いを込めて臨書すると、心が澄み渡る。

 決して不遇を嘆くことなく、いまを受け入れる恬淡(てんたん)とした生き方を詠んだこの詩は、きっと生まれてすぐに里子に出され、養家を転々とするつらい幼少期を送った魯山人の心もわしづかみにしたに違いない。

 石川九楊氏は「書家101」のなかで記す。

 《(中国の)書は、左遷と馘首(かくしゅ)と挫折を免れない政治家つまり文人の志の悲歌であった》

 魯山人の鋭い感性には、その蘇軾のエレジーがはっきりと聞こえたのではなかったか。それゆえ、この気宇壮大な詩を自分の手で美しく飾り、自分で文字を刻んで後世に伝えようとしたにちがいない。

 刻字屏風の背景の群青は長江の川の色、白い文字は空にかかる月の色…。

 美の使徒・魯山人の蘇軾へのオマージュは、見る者に「美」と「人生」を、静かに問いかけてくる。

▼何必館・京都現代美術館( http://www.kahitsukan.or.jp/ )

▼何必館・京都現代美術館(外部サイト http://www.kahitsukan.or.jp/ )

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正木利和 正木利和 産経新聞文化部編集委員。入社は、いまはなき大阪新聞。産経新聞に異動となって社会部に配属。その後、運動部、文化部と渡り歩く。社会人になって30年強になるが、勤務地は大阪本社を離れたことがない。その間、薄給をやりくりしながら、書画骨董から洋服や靴、万年筆に時計など、自分のメガネにかなったものを集めてきた。本欄は、さまざまな「モノ」にまつわるエピソード(うんちく)を中心に、「美」とは何かを考えながら、つづっていこうと思っている。乞うご期待。

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