産経WEST

【午後のつぶやき 大崎善生】母と交わした最後の会話、薄れゆく意識の中で…今こそ母を敬う

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【午後のつぶやき 大崎善生】
母と交わした最後の会話、薄れゆく意識の中で…今こそ母を敬う

 母親を決して敬ってはいけない。昭和32年に生まれた私はそう教えられて育った。母親とは敬うべき存在ではなく、子供を育てる道具のようなものなのだ。立派な子を育てることが最大の役割である。

 私だけではない。私の近所の子供も、親類やいとこも皆、同じような感覚で育った。何よりも母親自身がそう思っていた。自分は子供を育て乗り越えていってもらえばそれで十分。そのために自分は身を粉にし、すべてを捧げるのだ、と。

 そんな母も83歳を超え、札幌の一軒家での一人暮らしに限界がきた。兄がだましだまし新千歳空港まで運び、私が羽田で出迎えるという方法で何とか東京へ連れてきた。3年前の真夏のことである。その後は私の家で暮らし、老人ホームを探した。

 とてもいいホームが見つかり、やっと本人も落ち着いて暮らせるようになったのが東京へ連れてきて半年後。お正月気分も覚めない頃、ホームから電話が来た。母が廊下で転び動けなくなったという。検査の結果、大腿骨骨折。そして運び込まれた病院で胃のあたりに大きな癌(がん)があると判明。すぐに東京でも最大級の病院に運ばれ、胃から腸まで、ほとんどが癌に侵されていると知らされた。おそらく1か月ももたないだろう。手の施しようがないということだった。

続きを読む

「産経WEST」のランキング