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【井上章一の大阪まみれ】地上に降りてきた半裸の女神像、罰当たりな想像を…

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【井上章一の大阪まみれ】
地上に降りてきた半裸の女神像、罰当たりな想像を…

 女神人気の最盛期は、なんといっても一九五〇年代であったろう。敗戦後の大阪にあって、「平和の塔・女神像」は、ランドマークとなっていた。高い建物がまだ少ない時代であり、けっこうめだっていたと思う。ここが、カップルの待ち合わせ場所になっていたという昔語りも、しばしば耳にする。

 女神は右手を上にかざし、松明めいたものをもっていた。胸の露出をのぞけば、自由の女神をしのばせなくもない姿である。平和の象徴は、どこかで占領軍を代表するアメリカの象徴に、あゆみよっていたろうか。下から見あげたカップルたちも、女神像にニューヨークを想いえがいたような気はする。

 自由の女神は、バブル期前後からパチンコ店の頂部に、かざられだした。ラブホテルをいろどるものも、ちらほら見かけたものである。

 「平和の塔・女神像」の記憶も、それらをあとおししていたかもしれない。カップルが、下から自由の女神めいた像を、心斎橋でながめつづけてきた。その想い出が…罰あたりな想像を、もうしわけなく思う。

(国際日本文化研究センター教授)

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