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【石野伸子の読み直し浪花女】岡部伊都子「いとはん」の反骨(8)司馬遼太郎が愛し、中国が学ぶ戦前日本の女学校・女性の精神

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【石野伸子の読み直し浪花女】
岡部伊都子「いとはん」の反骨(8)司馬遼太郎が愛し、中国が学ぶ戦前日本の女学校・女性の精神

国内外を取材に歩いた。昭和41年6月、アムステルダムで。岡部伊都子43歳(藤原書店提供) 国内外を取材に歩いた。昭和41年6月、アムステルダムで。岡部伊都子43歳(藤原書店提供)

 司馬は歴史小説を書いていて資料の中から感じるのは、日本女性は必ずしも自分たちが概念としてとらえているような封建女性ばかりではないことだ。自由闊達(かったつ)な精神をもった女性はたくさんおり、例えば「竜馬がゆく」の竜馬の姉・乙女、「豊臣家の人々」の秀吉の妻ねね、などを挙げていることに関心をもったという。

 「概念的な女性観、例えば日本女性は学校教育を受けても妻や母親としての社会的価値しか認められなかったなどといった一面的な理解では分からないことがあるということを知りました。またそうした司馬さんの考えを引き出した岡部伊都子さんにも関心を持ち、作品を読んでみたいと思った」と沈さんはいう。

 どんなきっかけからも、作家は注目される。そして、精神は作品に宿っている。中国人留学生、沈さんに岡部作品は何をもたらすのだろうか。

 「シカの白ちゃん」という本がある。実在のシカの話を岡部が小さな子供にもわかるように昭和59(1984)年に書き下ろしたものだが、復刊されたり、韓国語や中国語に対訳されたりして読み継がれている。

 奈良公園に住む白ちゃんは生まれつき頭に白い毛がはえている。人間には珍しがられ可愛がられるが、シカの仲間にはのけ者にされる。それでも健気に生きてやっと子供を授かるが、その子は車にひかれて死んでしなう。悲しみにうちひしがれ、白ちゃんはだれも寄せ付けない孤独なシカになってしまう。

 悲しい話が時代を超え国を超え人の心を打つ。中国語に訳したのは在日歴16年の歌手、李広宏さん。日本語で初めて読んだ話に感動し、対訳を申し出た。2カ国語で作詞・作曲もし藤原書店からCDとともに出版もされている。

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