産経WEST

【夕焼けエッセー】3人(?)でお茶会

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【夕焼けエッセー】
3人(?)でお茶会

 お隣のYさんが亡くなられて、1年がたった。あの日、前日まで元気にされていたのに誰にも看取られることなくひっそりと旅立っていかれた。

 Yさんとは40年来のお隣同士だった。ご主人が亡くなられてからは、ずっと一人暮らしをされていた。実家の母と同じ歳ということもあり、私にとっては母のような存在だった。

 親族の方が遠方のため、私が鍵を預かり、ときどき窓を開けて風を入れている。すっかりきれいに片付けられた部屋はなんとも寂しい思いがしたが、時間がたつにつれ、少しずつ空き家にも慣れてきた。

 昨日、Yさんと親しかったご近所のKさんが来られた。「Yさんの大好物のよもぎの餅をついて持ってきたんだけど…お供えできたらいいんだけどね…」と言われた。そこで2人でYさん宅に入って、ささやかな一周忌をやろうということになった。

 私の部屋に飾ってあるYさんの写真とお茶を準備した。Yさんの席にお茶とお餅を置いた。写真の中のYさんがほほ笑んでいる。「このころは元気にあちこち旅行されていたよね」「長い間、よく1人で気丈に頑張ったね」「あちらの様子はどうですか」「きっとご主人と時々この家に来られてるかもね」などなど思い出話で盛り上がった。ちょっと寂しいけど、楽しい3人(?)のお茶会だった。

 ふっと庭の方を見ると、生け垣の木々に新芽が一杯芽吹いていた。主のいない庭にも春は忘れずに訪れていた。

簑内豊美(69) 主婦 堺市西区

「産経WEST」のランキング