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【田淵幸一物語・第3部(8)】暑い夏 もう一人の「幸ちゃん」

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【田淵幸一物語・第3部(8)】
暑い夏 もう一人の「幸ちゃん」

昭和44年8月、甲子園の話題は三沢高・太田幸司の熱投だった 昭和44年8月、甲子園の話題は三沢高・太田幸司の熱投だった

 太田はその年秋のドラフト1位で近鉄に入団。井上は明大へ進学し主将を務めた。卒業後は三菱重工長崎を経て昭和50年に朝日新聞社へ入社し「野球記者」になった。産経新聞とは記者席が近く、多くのことを教わった。「野球にはいろんな形がある。プロとアマの野球の違いをしっかりと頭に入れて見なきゃダメだよ」。井上の言葉は私の信条になった。

 太田が現役を引退し産経新聞の僚紙「夕刊フジ」の評論家になったとき、甲子園球場の記者席で2人に挟まれて野球をみる“幸運”に恵まれた。私はアルバイト時代の話をした。

 すると、井上は「みんなそう思っていたんだよ」とほほ笑み「毎年、夏の高校野球の時期になると、当時のことを聞かれる。あと何年、同じ話をしなきゃいけないんだろうね」とポツリつぶやいた。

 初めて感じた井上の心情。彼にとって44年の夏は暑く、苦しく、そして思い出したくない出来事だったのかもしれない。

(敬称略)

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