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【鹿間孝一のなにわ逍遙】あきれたお役人の「関西弁」

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【鹿間孝一のなにわ逍遙】
あきれたお役人の「関西弁」

経産省が作成した、万博の大阪誘致に関する最終報告書案「関西弁版」(部分) 経産省が作成した、万博の大阪誘致に関する最終報告書案「関西弁版」(部分)

 谷崎潤一郎は関東大震災で東京を離れ、関西に移り住んだ。

 随筆「私の見た大阪及び大阪人」で、東西の言葉の印象をこう書いた。

 〈一と口にいえば東京の言葉はおしゃべりに過ぎるように出来ている〉

 〈大阪のは言葉数が多くても、その間にポツンポツン穴が開いている〉

 どちらに軍配を上げるわけでもないが、関西の女性の言葉には感心したようだ。

 〈さすがに関西の婦人の言葉には昔ながらの日本語の持つ特長、-十のことを三つしか口に出さないで残りは沈黙のうちに仄(ほの)かにただよわせる、-あの美しさが今も伝わっているのは愉快だ〉

 文豪はそうした関西言葉を駆使して「細雪」などの名作を書いた。

 経産省の役人は谷崎を読んだことがないのか。

 役所の文書の堅苦しさ、わかりにくさは悪文の見本である。ならば親しみやすくと「関西弁バージョン」を考えたのだろうが、これはむしろ害をまき散らす。

 関西のイメージダウンであり、これから地元の盛り上がりが欠かせないのに、当の関西人があきれて、大阪万博から気持ちが離れてしまう。

 「アホちゃうか」と言うしかない。

鹿間孝一 鹿間孝一 産経新聞特別記者兼論説委員(平成25年9月まで大阪特派員を兼務)。北海道生まれの大阪人。生涯一記者を自任していたが、なぜか社命によりサンケイリビング新聞社、日本工業新聞社で経営にタッチして、産経新聞に復帰した。記者歴30余年のうち大半が社会部遊軍。これといった専門分野はないが、その分、広く浅く、何にでも興味を持つ。とくに阪神タイガースとゴルフが好き。夕刊一面コラム「湊町365」(「産経ニュースWEST」では「浪速風」)を担当。共著に「新聞記者 司馬遼太郎」「20世紀かく語りき」「ブランドはなぜ墜ちたか」「なにが幼い命を奪ったのか 池田小児童殺傷事件」など。司馬遼太郎に憧れるも、いうまでもなく遼に及ばず。

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