記事詳細
【熊本地震1年】
娘に卒業の報告したい 東海大卒業式に犠牲女子学生の遺族が出席
昨年4月の熊本地震で、阿蘇キャンパスに通っていた学生3人が亡くなった東海大は19日、熊本市の熊本キャンパスで卒業式を開き、冒頭に全員が起立して犠牲者に黙祷をささげた。亡くなった農学部4年、脇志朋弥(しほみ)さん=当時(21)=にも卒業証書が贈られ、妹の麻奈好(まなみ)さん(16)が受け取った。
脇さんの両親も出席し、大学を通じて「地震速報が流れるたびに今でも娘を思い出す。卒業学位をいただけて本当にうれしくありがたい。さっそく墓前に行き、卒業証書のことを報告したい」とコメントした。
同大によると卒業・修了したのは計535人。このうち農学部生など245人が、地震まで同県南阿蘇村の阿蘇キャンパスで学んでいた。
農学部を卒業する成木翔太さん(22)は答辞で「地震の恐怖を忘れることはできないが、ここで学んだことを忘れず、前を向き歩いていく」と決意を述べた。山田清志学長は「一緒に卒業を迎えるはずだった脇さんらの尊い命が犠牲になった。誠に残念だが、これらの歴史を忘れず、未来へ羽ばたいてほしい」と語った。
阿蘇キャンパスは昨年4月16日の「本震」で、地割れが発生するなど甚大な被害を受けて閉鎖。周辺に居住していた学生ら約800人は熊本市内に転居し、熊本キャンパスで授業を受けてきた。阿蘇キャンパスは来年度から農業実習などで一部再開するが、本格的な復旧の見通しは立っていない。