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【井上章一の大阪まみれ】「浪速のバルトーク」作曲の大阪俗謡、ベルリンでお披露目

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【井上章一の大阪まみれ】
「浪速のバルトーク」作曲の大阪俗謡、ベルリンでお披露目

 指揮者の朝比奈は、一九五六年に渡欧する。ベルリンでは、ベルリン・フィルの指揮台にたつ機会も、あたえられた。ベルリン側は、事前に朝比奈へ日本人の現代音楽を持参するようにもとめている。あまりヨーロッパ的ではない曲を持参、ベルリン・フィルでの演奏で紹介してほしい、と。

 この要請を、朝比奈もうけいれた。曲作りの能力もある大栗に、一曲こしらえてくれと、たのんでいる。大栗の代表作である「大阪俗謡による幻想曲」(ファンタジー・オン・オオサカ・フォーク・チューンズ)は、こうしてなりたった。天神祭の御囃子めいた音などを、しばしばひびかせる管弦楽曲が、できあがったのである。

 ベルリンでの御披露目は、たいそうよろこばれたらしい。以後これは、朝比奈が海外で公演をするさいの、挨拶(あいさつ)代わりめいた楽曲に、なっていく。「ベルリン・フィルにささげる」。そうしるされた大栗の原譜は、今も同フィルの資料庫におさめられている。

 さて、戦前の朝比奈は、メッテルからヨーロッパの猿真似(さるまね)をやめろと言われていた。日本人なら、日本人らしい音楽をこしらえよ、と。ロシア帝政期に、「国民楽派」を生きたメッテルの、それは遺訓でもあった。その延長線上にこの曲も位置づけたいが、どうだろう。  (国際日本文化研究センター教授)

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