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【元祖・歌うおまわりさん(4)】ガソリンに点火した立てこもり犯、消火器の粉の中で取り押さえ…元広島県警警部・小原治朗さん

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【元祖・歌うおまわりさん(4)】
ガソリンに点火した立てこもり犯、消火器の粉の中で取り押さえ…元広島県警警部・小原治朗さん

小原治朗さん  小原治朗さん 

 「ギャー!」と突然叫ぶ元妻。なんと、そのとき初めて包丁に気づき、恐怖で暴れだしたのです。すると幸運なことに、彼女の体が男の腕をヒット、包丁が光りながら飛んでいきました。

 「今だ!」と、私が男に飛びかかったそのとき、ボウッと音を立て、天井まで上がる火柱。男がライターに火をつけたのです。

 「消せ!」と叫ぶ課長の声が早いか遅いか、消火器が一斉に噴射。周囲は白い粉で何も見えなくなりました-。

 1分ほど経ったでしょうか。もがく男を押さえ込んだ私の視界が、次第に開けてきます。どうやら火はすぐに収まったようです。事件発生から約1時間で、男に手錠がかかりました。

 その後の取り調べで、男は私に「刑事さんが入って来たときから、俺は完全に負けたと思っていた」と話し始めました。「怖がりもせず、俺を威嚇せず、ばかにもしなかった」と。

 男は30代半ば。元妻とは大学進学で一人暮らしをしていた当時に知り合い、子供ができて結婚。幸せになるはずが、男の体には入れ墨があり、仕事が続かず、けんかが絶えない新婚生活はすぐに悲しい幕切れを迎えました。

 ところで、粉まみれになっていた課長は、気の毒に皮膚の出ていた顔と手首にやけどを負い、以後しばらく、赤くなった顔にアロエを塗っていました。そして25歳の刑事は、目の周りを真っ黒にしていました。犯人に殴られたというのですが、当時体重が95キロもあった私がずっと犯人を押さえ込んでおり、犯人は彼を殴れません。

 覚醒剤は人を狂わせますが、消火剤の白い粉も人を狂わすのか? 白い粉の中で何が起きていたのか、それは誰にも分かりません。

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