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【元祖・歌うおまわりさん(4)】ガソリンに点火した立てこもり犯、消火器の粉の中で取り押さえ…元広島県警警部・小原治朗さん

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【元祖・歌うおまわりさん(4)】
ガソリンに点火した立てこもり犯、消火器の粉の中で取り押さえ…元広島県警警部・小原治朗さん

小原治朗さん  小原治朗さん 

 芸能界では、まさかと思うタレントが薬物で逮捕されています。“白い粉”は意外にも身近にあり、私にも、忘れられない事件がいくつかあります。

 30年ほど前の、空気が乾いた2月の午後。ある家の玄関先に、数カ月前にその家の娘と離婚した男が立っていました。

 「娘を出せ。いるんだろう」

 男は出てきた元妻の両親が制止する間もなく、2階にかけあがりました。右手には、ガソリンの入ったポリタンク。男は自分と元妻にガソリンをかけ、残りを6畳ほどの部屋にまき、「よりを戻そう。だめなら俺は死ぬ。一緒にお前も死んでくれ」と元妻に復縁を迫ったのです。

 交番から駆け付けた警察官に男は「刑事を呼べ!」と居直り、立てこもりが始まりました。

 現場は、木造住宅が密集する中の戸建て。発生の一報に、私はとりあえず手錠と特殊警棒を持ち、真っ先に署を飛び出しました。課長は他の刑事に「署内の消火器を全部持って行け!」と叫びました。

 到着すると、部屋にはガソリンのにおいが充満していました。男はライターを持った左手で元妻を拘束し、右手に持った真新しい刺し身包丁を彼女の首に突きつけ、私をにらみました。

 「おい、希望通り刑事が来たぞ。もういいだろ」

 男と私の距離は約1メートル。すぐに他の刑事も駆け付け、消火器を手に部屋のドアや窓の外の瓦屋根など、出入り口のすべてを封鎖しました。

 「嫌がる女を連れて帰っても仕方ないぞ」

 私は説得を続けましたが、男も強情でした。30分ほどが経過、男に疲れの色が見えてきて、包丁を持った右腕が、元妻の首から下がり始めました。

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