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【正木利和の審美眼を磨く】鉄斎ブームくる? 「賛」読み解く「手ごわさ」

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【正木利和の審美眼を磨く】
鉄斎ブームくる? 「賛」読み解く「手ごわさ」

富岡鉄斎「名古曽関」。名所を描いた絵にも源義家の和歌が漢字で記されている 富岡鉄斎「名古曽関」。名所を描いた絵にも源義家の和歌が漢字で記されている

 とんでもなく過熱した江戸期の画家、伊藤若冲(1716~1800年)の人気を体感したのは、昨春のことだ。

 生誕300年を記念して東京都美術館の若冲展に名画「動植綵絵」が全幅出るというので上野公園に行ってみると、長蛇の列ができていて、待ち時間の表示は「210分」。隣の国立西洋美術館でカラバッジョ展を見てもどってみても「180分」である。ただ、せっかく来て、お目当てを見ずに帰るのもしゃくなので、結局、3時間待って入った。しかし、なんのことはない、人の頭ばかりを見ているようなもので、興ざめしてしまった。

 まあ、こうしたブームもいずれは落ち着く。

 ならば、次にブレークするのは誰か。しばらく前、なじみの古美術商を京都に訪ねたとき、「ポスト若冲」が話題にのぼった。

 「そろそろ鉄斎がくるんちゃいますやろうか」

 その古美術商は言った。

 文人画の巨人、富岡鉄斎(1836~1924年)のことである。

 その古美術商が挙げる理由は、南画(文人画)の価格が全般に下がりすぎていて、ぼちぼち上がってきてもよいのではないか、という観測と、外国人が鉄斎の作品を求めている、という点にある。

 なるほど、その店の客の動きを見ていると、ちかごろは確かに外国人が目立つようになってきた。

 日本の古書画に関心を持つ外国人が増えたということもあろうが、相場があまりに安く、投資しておけばいずれ上がると見込んで買われているという背景もあるそうだ。なかでも、鉄斎はダイナミックな筆遣いや鮮やかな色彩といった点が彼らに受けるのだという。

 一理あるな、と思いながら、古美術商の話を聞いていたのだが、そのうち疑問もわいてきたのだった。

 幕末、国学や漢学、絵画を学び、維新後は全国を旅して回ったあと神官になったり、南画の協会を立ち上げて帝室技芸員に任ぜられたりした鉄斎だが、自身は画家である前に学者であると思っていたようである。

 彼の創作姿勢を物語っているのが次の言葉だ。「南画の根本は学問にあるのじゃ。そして人格を研(みが)かなけりゃ描いた絵は三文の価値もない」(山水画談)

 だから手ごわい。

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