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【田淵幸一物語(13)】婚約発表の延期を申し出た掛布の心とは

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【田淵幸一物語(13)】
婚約発表の延期を申し出た掛布の心とは

昭和53年11月13日、住谷安紀子さん(左)との婚約を発表した掛布 昭和53年11月13日、住谷安紀子さん(左)との婚約を発表した掛布

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 田淵と掛布が縦じまのユニホームを着て一緒にプレーしたのはわずか5年しかない。  

 「あいつの打球を初めて見たときに“オレの後継者だ”と直感した」。田淵は“帝王学”を伝授するために、9歳年下の掛布をどこへ行くにも連れて回った。

 「田淵さんから怒鳴られたことは一度もなかった。本当に優しい人。ファンから罵声を浴びせかけられても怒ったりしない。それどころか、どんなにチーム成績が悪くても堂々と遊びに行った。大きな背中だった」と掛布は振り返る。

 昭和53年のシーズン中、チームが低迷する中、いつものように2人は大阪のキタ新地に飲みに出かけた。大柄な田淵は目立った。

 「あれ、田淵や。ようこんな成績で遊べるな。恥ずかしないんか! はよ、帰って練習せい!」

 ファンからの厳しい罵声が飛ぶ。すると田淵は-。「いつかオレが居なくなったら、今度はカケ、お前が矢面に立たなきゃいけないんだぞ。試合で打つだけじゃない。若い選手を守るのもお前の役目だ」。掛布は田淵の言葉を神妙に聞いた。まさか、このあと本当に「別れ」がやって来るとは思ってもみなかった。

 シーズンが終了し、10月24日、突然、スポーツ紙が一斉に「田淵放出」を報じた。球団は否定するどころか公に認め、各球団が獲得に手を挙げる。

 「ウソだろう。田淵さんが居なくなる? 信じられなかった。これまでボクは“温室”の中にいた。試合に負ければ罵声を浴びるのは田淵さん。ファンやマスコミから守られ、田淵という“灯台”に照らされていたから、前に進むことが出来た。その火が消えるなんて」

 衝撃を受けた掛布は、なんと11月13日に予定していた住谷安紀子さんとの婚約発表の延期を球団に申し入れたのである。

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