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【夕焼けエッセー】初恋とSNS

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【夕焼けエッセー】
初恋とSNS

 私の初恋は小5の時。相手は同じ塾に通う高宮くん。きっかけは、容姿をからかわれていた私をかばってくれたことだった。それだけで10歳の女の子には十分な理由だが、さらに運命的な出来事があった。

 正月に家族で長野県のスキー場に行った時、そこで高宮くん一家を見つけたのだ。よく彼の話に登場していたお姉さんもいた。家族といる彼はいつもより少し子どもっぽくて、思わず頬がほころんだ。

 それからは大変だった。彼の自分への知りたい、2人きりで話したい。そんな思いが募り、勉強にまったく身が入らない。気持ちを抑えるように、私はバレンタインに告白しようと決めた。

 だが終わりは突然に訪れた。12月のある日、高宮くんは塾に来なかった。他の子が大阪に引っ越したと教えてくれた。

 人生で初めての失恋。もう一生会えないと思うと涙がこぼれた。それと同時に、いつかタイムマシンができたら、夏期講習の日々に戻ろうと心に決めた。その頃の席は彼の隣で、私は地球上の誰よりも彼のそばにいたからだ。

 その後もスキー場に行く度彼の家族を探したが、見つけられなかった。

 あれから9年。世の中ではSNSが流行し、遠く離れた人とも連絡がとれるようになった。

 大学生になった私は、高宮くんの名前を検索した。クリックした瞬間、あっけなく彼が現れた。連絡しようかと迷ったが、結局しなかった。何となくそれが筋だと思った。

 たとえこの先タイムマシンができたとしても、私は高宮くんのいた日々には戻らないだろう。

 伊藤 帆乃香(19) 大学2年生 横浜市戸塚区

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