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【第44回産経適塾 詳報(2完)】地球で生きるもう一つの道、「心のなかの島」オセアニア伝統航海術の知恵 須藤健一・国立民族学博物館長

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【第44回産経適塾 詳報(2完)】
地球で生きるもう一つの道、「心のなかの島」オセアニア伝統航海術の知恵 須藤健一・国立民族学博物館長

須藤健一・国立民族学博物館長 須藤健一・国立民族学博物館長

航海術の伝授は、男児が5歳になると星座コンパスから始めます。父親から航海術を学び、長老から個人レッスンを受けて公の試験をうけます。昔は4日4晩のポ(航海術修得儀礼)で、長老たちから航海術のあらゆる知識を諮問されました。それに合格し、長老をのせて数百キロ先の島に航海します。流れないで帰ってきたら、航海者の資格がもらえます。それが20歳代後半です。「真の航海者」になるにはさらに30年は海に出ます。

行く島が心のなかに見えるか

 航海術師は、航海に出かける若者に、「行く島が心のなかに見えるか」と聞きます。目的地への航海の道筋や航海中に遭遇する現象とそれに関する情報を十分知っているかという問いです。見えない島に向かい、あらゆる自然の動きをよんで、数百キロ先の島へとカヌーを進めるのが伝統航海術です。「心の中に島」が見えない、つまり自分の知識と経験に自信をもてないような心的状況では航海はできないのです。

 サタワルの人びとはこう言います。「ガソリンを買うには金がいる。でもカヌーは風が吹けば動かせる。自然のエネルギーを使えば、日本へでもどこへでも行ける。カヌーは島の産物でつくることができる。これさえあれば、私たちは島で生きてゆける」近代文明に依りきっている私たちに、地球で生きるもう一つの道を教えてくれているように思います。

 私たちはこれからの人生航海にどのような「島」を心のなかに描くことができるでしょうか。皆さま人生設計において、これまでの豊かな人生経験と深い知識を存分に生かして新しい「島」を発見する楽しみを味わって見てください。

                   ◇

 すどう・けんいち 東京都立大学社会科学研究科博士課程中退。文学博士。オセアニアの社会と文化変容などをテーマにフィールドワークを行っている。新潟県出身。

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