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【夕焼けエッセー】如雨露(じょうろ)の湯浴み

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【夕焼けエッセー】
如雨露(じょうろ)の湯浴み

 近頃年のせいか、肩を寄せ合って暮らした時代を懐かしく思い出す。個人を求め孤独に向き合う社会の今、結婚しない若者や伴侶との別れもそれぞれの孤族を増やした。

 人は「生老病死」の道程を必ず通過する。そんな中、1人暮らしの私も思いもかけず体調を崩し、1カ月の入院を余儀なくされた。不安を抱きつつ退院した。

 退院の日、看護師さんから「シャワーはどのようなタイプのものをお使いですか。ウォシュレットはありますか」など、自宅での手術後のケアの説明を受けた。わが家にはそれらを取り付けてはいない。

 ひと頃、三種の神器という言葉がよく使われた。現在は文化的な生活がこの種のことを言うのか、と思った。

 お風呂にはしばらく入ることはできない。さて…、どうするか…。そうだ!「如雨露(じょうろ)」を使えばよいのではないか、と思いついた。

 早速湯船に水を張り、お風呂を沸かした。洗面器と如雨露を使い分け試みてみた。傷口はガーゼが当ててあり傷に付着している。

 そこに、草花に水をやるように如雨露で静かに流した。ガーゼは水分を含んでやわらかくなり自然と剥がれた。

 如雨露の湯浴みも、またおつなものと自分を慰めつつも…。

 明日この世を去るとしても、今日という日の花に如雨露で水を注ぎたい。

林田ゆき子(68) 兵庫県川西市

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