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【夕焼けエッセー】忘れられぬ弟

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【夕焼けエッセー】
忘れられぬ弟

 弟が亡くなって8カ月が過ぎました。

 まだまだ忘れることが出来ない。切なくて、もどかしく、なかなか踏ん切りが付きません。

 私が1歳のときに家族は中国へ渡りました。5年の間に2人の弟もできました。敗戦となり、亡くなった弟が1歳のときに、親子5人、着の身着のままで日本に帰ってきて、いやというほど苦労しました。でもどんなに貧乏でも、仲のよい両親の夫婦げんかは一度も見たことがありませんでした。

 そんな両親の下で育った私たち3人は、とても仲良く、特に私がおんぶしながら手掛けた下の弟は、無条件にかわいかった。弟も実に姉思いだった。外ではめちゃくちゃ腕白坊主でしたが、勉強は抜群の成績でした。

 大人になって弟とは遠く離れていたので、常に電話が多かった。昼でも夜でも、姉さん、オレやーの声。それは今も私の脳裏から抜けません。

 私は決して後ろ向きの性格ではないのに、弟のことは別なのです。いまも、携帯電話の番号を削除できなくて、ひょっとしたら、天国から電話がかかってくるのではないかしらと、常に心待ちに待っているのです。

 もう一度でいいから、弟の声が、姉さんオレや、の声を聞きたい。

 宮本恵子(76) 主婦 大阪府東大阪市

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