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【坂口至徳の科学の現場を歩く】遺伝子を直接挿入…ゲノム編集の新技術 理研など国際共同研班

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【坂口至徳の科学の現場を歩く】
遺伝子を直接挿入…ゲノム編集の新技術 理研など国際共同研班

開発されたゲノム編集の技術を使って遺伝子を改変した成体マウスの脳の一部の染色写真。明るい緑色に光る細胞が、ゲノム編集に成功した神経細胞を示している(理化学研究所提供) 開発されたゲノム編集の技術を使って遺伝子を改変した成体マウスの脳の一部の染色写真。明るい緑色に光る細胞が、ゲノム編集に成功した神経細胞を示している(理化学研究所提供)

 親から子に伝えられる遺伝の情報は、細胞の核の中のDNA分子に書き込まれている。DNAを構成する核酸塩基の並び方によって暗号のように遺伝子の情報が書かれていて、それがゲノム(遺伝情報)という生命の基本的な設計図になる。

 バイオの研究分野で盛んに使われ始めた「ゲノム編集」は、遺伝子を自由に選んで書き換える技術。不都合な遺伝子を失くしたり、別の有用な遺伝子を導入して換えたりして、ゲノムの設計・改変が可能だ。このため、医療を始め、エネルギー関連や食品工業といった分野でも期待されている。

 そのゲノム編集の技術を大きく進展させる研究が、英科学誌「ネイチャー」に掲載されるに先立ち、オンライン版で発表された。

 理化学研究所多細胞システム形成研究センターの恒川雄二研究員、松崎文雄チームリーダーと米国ソーク生物学研究所の国際共同研究グループは、これまでゲノム編集の技術の使用が困難とされていた、神経細胞など細胞分裂しなくなった細胞にも有効な新しい遺伝子操作技術を開発した。

 これまでのゲノム編集は、損傷して切断されたDNAを細胞分裂のさいにつなぎ合わせて修復する仕組みを利用していた。細胞内のDNAは2本の長い鎖状の分子が対になっており、2つの細胞に分裂するさいに1本ずつ分かれたあと、それぞれの一本を鋳型にしてもう1本のDNAができて、元の細胞と同じ1対になる。そのときにDNAの特定の場所を切断する酵素を使い、鋳型になるDNAの切断部分に遺伝子DNAを入れておけば、「相同組換え」という仕組みにより、それを写し取って、その遺伝子を挿入した1対のDNAができることになる。ところが、受精卵から器官に分化したあと、分裂しなくなった神経、筋肉、網膜などの細胞には、相同組換えが起こらないので、この方法が使えなかった。

 今回、研究グループは、分裂していない細胞にも、切断されたDNAを直接つなぐ「非相同末端結合」という修復機能があることに着目。遺伝子を挿入するDNAの部位を特定の酵素で切断し、目的の遺伝子を入れると、共に切断された部分と修復の機構が認識してつなぎ合わせることで挿入されるという技術を開発した。

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