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【石野伸子の読み直し浪花女】須賀敦子の終わらない旅(5)カトリック左派、新しい信仰…“希望の拠点”コルシア書店

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【石野伸子の読み直し浪花女】
須賀敦子の終わらない旅(5)カトリック左派、新しい信仰…“希望の拠点”コルシア書店

昭和34年8月、ロンドンにいたダヴィデ神父を訪ねて交友を深める(県立神奈川近代文学館所蔵) 昭和34年8月、ロンドンにいたダヴィデ神父を訪ねて交友を深める(県立神奈川近代文学館所蔵)

 須賀が書店とかかわりをもったのは、その終盤10年余り。

 「あれから三十年、東京でこれを書いていると、書店の命運に一喜一憂した当時の空気がまるで“ごっこ”のなかのとるにたらない出来事のように思える」(「銀の夜」)とも吐露しているが、それは本人も書いているように30年後の遠い追憶であって、当時の須賀にとってコルシア書店は「イタリアのおくれてきた青年たち」と同様、希望の星だった。

 マリアが送ってくれたコルシア書店の印刷物を読んだ須賀は、「純粋を重んじて頭脳的なつめたさをまぬがれないフランスのカトリックと比べると、ずっと人間的にみえて、強くひかれた」。ローマ留学が決まったとき目標のひとつに、書店のたちに会うことと心に決めている。

 とまどいが多かったフランス留学のときと違い、ローマ留学すると一直線にコルシア書店に向かっている。

 まず、留学した1968年の暮れには、マリアの紹介で創設者のダヴィデ(トゥロルド神父)に会いに行っている。翌年の夏には、夏休みを利用して、ミラノを追われていたダヴィデをロンドンに訪ね、親交を深めた。

 書店の活動に興味を抱くこの東洋の若い女性に神父も興味を抱いたのか、翌1月、ジェノワで開かれたコルシア書店の仲間との会合に須賀も招かれ、神父の仲介でコルシア書店に参加することが決まる。須賀はローマからミラノに居を移し、本格的にコルシア書店にかかわることになる。

 とりわけ、コルシア書店の実質的な運営を担当していたジュゼッペ(ペッピーノ)・リッカとの出会いは須賀にとって大きい。

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