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【坂口至徳の科学の現場を歩く】尿から肺がん発見…「匂い」数十万種かぎ分け、迅速・全自動ロボ 阪大、センサー開発に期待

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【坂口至徳の科学の現場を歩く】
尿から肺がん発見…「匂い」数十万種かぎ分け、迅速・全自動ロボ 阪大、センサー開発に期待

マウスの鼻から嗅神経細胞群を取り出し(a)、直径10ミクロンの穴が40万個空いているスライドグラスに入れて整列させる(b-c)。匂い分子を還流させ、嗅覚受容体が反応すると蛍光を発する(d)。全自動1細胞解析単離装置により光った細胞を単離し(e)、その細胞の遺伝子を増幅して受容体の遺伝子を突き止める(f)=黒田俊一・大阪大学教授提供 マウスの鼻から嗅神経細胞群を取り出し(a)、直径10ミクロンの穴が40万個空いているスライドグラスに入れて整列させる(b-c)。匂い分子を還流させ、嗅覚受容体が反応すると蛍光を発する(d)。全自動1細胞解析単離装置により光った細胞を単離し(e)、その細胞の遺伝子を増幅して受容体の遺伝子を突き止める(f)=黒田俊一・大阪大学教授提供

 匂いはヒトや動物にとって重要な情報源で、周囲の環境の変化を察知するだけでなく、体内の生理作用や感情にも深く関係する。その匂いを感じる仕組みは、匂いの分子を鼻の奥にある嗅覚器官の受容体(嗅覚受容体)が受け取り、その情報が神経を刺激して脳に伝えられ、どのような匂いか識別される。

 ところが、地上には数十万種類の匂い分子があるとされているのに、それに対応する受容体の数はあまりにも少ない。これまでのさまざまな動物の遺伝子を解析した研究では、受容体の種類の数はアフリカゾウが約2000個でもっとも多く、マウスが1130個、鼻が利くとされるイヌは約800個で、ヒトは約400個にすぎない。そこで有力な説として提唱されているのは、1つの匂い分子に対し特定の1つの受容体が反応するのではなく、複数の受容体が協調して反応し、その組み合わせでパターン認識しているのではないか、という考え方だ。ただ、そうした仮説を実験で証明するには、目的の受容体だけを生きたまま反応する状態で取り出して迅速に調べる必要があり、ネックになっていた。

嗅覚そして舌に替わる味覚…バイオセンサー開発へ

 大阪大学産業科学研究所生体分子反応研究分野の黒田俊一教授、良元伸男特任准教授らの研究グループは、特定の匂い分子に反応する嗅覚受容体群を細胞内で反応する状態のまま、まとめて素早く取り出し、個別に受容体の遺伝子が解析できる方法を開発した。すでにマウスを材料に、肺がん患者の尿に含まれる匂い分子に反応する受容体を突き止めることに成功している。また、この方法は、目的の匂い分子を精密に検出するバイオセンサーとしての利用も期待できる。この成果は、英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。

 研究グループは、嗅覚器官に集まっている嗅神経細胞それぞれが1種類の嗅覚受容体を持っていることに着目した。考案した実験の仕組みは、樹脂製のスライドガラス上に直径10ミクロンの穴を40万個開けて、それぞれの穴に、マウスから採取した嗅覚細胞を一つずつ個別に納める。そのうえで、個々の嗅覚細胞の受容体が、匂い分子に反応すると蛍光を発するようにして目印をつけるというもの(図参照)。

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