産経WEST

【海道東征を紡ぐ 信時潔物語】(24)完 書斎のピアノ、ふた開いたまま…音楽と家族に囲まれ“最期の微笑”

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【海道東征を紡ぐ 信時潔物語】
(24)完 書斎のピアノ、ふた開いたまま…音楽と家族に囲まれ“最期の微笑”

 バッハ、ベートーベン、ワーグナー…。信時潔(のぶとき・きよし)は「心の養ひ」として、書斎のピアノをよく弾き、楽しんだ。留学先のドイツから持ち帰ったたくさんの楽譜には、曲ごとの印象や特徴を書き込み、相当使い込んでいたようだ。

 昭和40年7月31日深夜、東京・国分寺の自宅で心筋梗塞で倒れ、翌8月1日未明、家族に囲まれ静かに息を引き取った。その部屋の隣、書斎のアップライトのピアノのふたはあいたまま、譜面台には楽譜が開かれたままだった。

 信時も参加した同人雑誌「心」の同年10月号に、追悼文を寄せた友人で医師・音声学者の颯田琴次(さったことじ)は、その最期の顔をほほえみかけるようだったとし、《最後の心境を如実に物語っているとおもう》と記した。最期まで音楽と家族に囲まれた幸せな人生が、そのあたたかな笑顔となったのだろう。

「産経WEST」のランキング