産経WEST

【坂口至徳の科学の現場を歩く】10倍超す高感度、低コスト効率よく…臨床検査法を実用化 阪大、免疫測定法に抗体「足場」分子

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【坂口至徳の科学の現場を歩く】
10倍超す高感度、低コスト効率よく…臨床検査法を実用化 阪大、免疫測定法に抗体「足場」分子

4種類の蛍光色素を1色ずつ付けた足場分子に、4種の抗原に対し個別に反応するマウスの抗体を種類ごとに結合したあと混合する。ウエスタンブロット法という方法で4つの抗原を分離したあと反応させると、抗原の種類に応じて4種の異なる色に発光する。これで試料に含まれる4つの抗原に対し同じ動物種由来の抗体を使っても同時に可視化できたことがわかる(大阪大学産業科学研究所提供) 4種類の蛍光色素を1色ずつ付けた足場分子に、4種の抗原に対し個別に反応するマウスの抗体を種類ごとに結合したあと混合する。ウエスタンブロット法という方法で4つの抗原を分離したあと反応させると、抗原の種類に応じて4種の異なる色に発光する。これで試料に含まれる4つの抗原に対し同じ動物種由来の抗体を使っても同時に可視化できたことがわかる(大阪大学産業科学研究所提供)

 健康長寿や医療費削減が医療の大きな課題になっている時代に、臨床検査は大きなウエートを占めている。例えば、ウイルスなど病原体が感染したとき、臨床検査で病原体の種類や増殖の程度などを知っておくことが的確な治療につながる。また、予防医療の面でも、生活習慣病の指標である2-3週間の平均の血糖値を示す「HbA1c」の測定などにより、健康のチェックができる。こうした検査のなかで使われる「免疫測定法」という検査法の技術が重視されている。病原体などを異物(抗原)として抗体が反応し、それに結合して排除する免疫の仕組みを利用したもの。正確さや精度の高さなどのメリットに加えて、短時間に簡便に感度良く測定できるなど効率化の面で、さらなる技術的な進化が求められている。

 大阪大学産業科学研究所の飯嶋益巳・特任助教、黒田俊一教授は、免疫測定法により、1つの試料に含まれる複数の抗原(タンパク質)を同時に種類別に色分けして可視化できる「彩り(IRODORI)」法を開発することに成功した。

 従来の免疫蛍光法では、マウスなど同じ動物種由来の複数の種類の一次抗体(抗原に直接結合)を同時に混ぜると、特定の一次抗体に結合して抗原を検出するはずの二次抗体が、すべての一次抗体と結合してしまうため、基本的に1つの試料からは1つの抗原しか検知できないというネックがあった。そこで、同種の抗体だけを整列して安定につけられる「足場」の分子を開発し、他種の抗体の影響を受けなくすることで解消した。検出感度も従来法の十倍以上に高まった。臨床検査の効率化を格段に進める方法として注目されている。

 飯嶋特任助教らが開発した足場分子(ZZタグ提示型バイオナノカプセル)は、約120個のタンパク質が球形のリポソーム(脂質二重膜)に埋め込まれた直径約30ナノ(ナノは10億分の1)メートルの粒子で、酵母の菌体内で生産される。

「産経WEST」のランキング