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【坂口至徳の科学の現場を歩く】誰もが感染ヘルペス…EBウイルスの因子を解明 阪大、自己免疫疾患の治療に道

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【坂口至徳の科学の現場を歩く】
誰もが感染ヘルペス…EBウイルスの因子を解明 阪大、自己免疫疾患の治療に道

成熟段階にあるB細胞(胚中心B細胞)の表面に、排除する異物(抗原)に合わない受容体(BCR)や自分の抗原に反応する受容体があれば細胞死して排除される。ところが、EBウイルスに感染するとLMP2Aや分化を促進する因子(Zbtb20)が出現して生き残り(B細胞選択異常)、自己反応性受容体など抗体を出し続けるB細胞(抗体産生細胞)になる結果、自己免疫疾患が発症する(安居輝人・大阪大学准教授提供)

 ヘルペスウイルスの仲間であるEBウイルスは、小児期に唾液を通じて感染することが多く、通常、無症状か軽い症状が出るだけだが、ずっと体内に潜んでいて成人の90%以上が感染している。思春期に感染すると、発熱や喉(のど)の痛み、リンパ節の腫れを起こす「伝染性単核球症」になることも知られている。

 そのEBウイルスについては、異物を排除して自分を守るはずの免疫のシステムが過剰に反応して狂い、逆に自分を攻撃するようになる「自己免疫疾患」と関係することが指摘されている。多くの臓器に炎症が起きる「全身性エリトマトーデス」や脳、脊髄、視神経に障害が出る「多発性硬化症」などだが、EBウイルスの感染がどのような仕組みで発症に関わっているのか、詳細は不明だった。

感染した免疫細胞を生き残らせ、分化を促進

 大阪大学微生物病研究所・免疫学フロンティア研究センターの安居輝人准教授、菊谷仁教授らの研究グループは、マウスの実験でEBウイルスが、免疫のシステムの中で異物を排除する抗体を作り出す免疫細胞(B細胞)に感染したさい、その細胞の表面の膜に特定のタンパク質(LMP2A)を生じさせることが、自己免疫疾患の引き金になっていることを初めて突き止めた。このタンパク質があることで、感染したB細胞は生き残り、自己を異物として攻撃する抗体をつくり続けることになる。研究グループでは「LMP2Aを標的にした新たな自己免疫疾患の予防・治療法の開発が期待できる」という。

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