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【関西の議論】医療用麻薬「事実無根のタブー視」(上)トヨタ元役員事件で日米ギャップ 「〝痛み〟に耐える=美徳」がもたらす「悪循環」

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【関西の議論】
医療用麻薬「事実無根のタブー視」(上)トヨタ元役員事件で日米ギャップ 「〝痛み〟に耐える=美徳」がもたらす「悪循環」

日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団による「死期が近い場合の不安や心配ごと」を尋ねる意識調査では、「痛みや苦しみ」を挙げる人が毎回最も多い。「痛みに耐える=美徳」という日本人の道徳観から、医療用麻薬の使用が米国と比べて忌避されがちだった日本。果たして医療の場で痛みは我慢しなければならない対象なのか

 痛みと、薬との付き合い方。2つの点で日米のギャップを浮き彫りにした事件だった。トヨタ自動車のジュリー・ハンプ元常務役員による医療用麻薬の密輸事件。結果的には起訴猶予で釈放されたが、世界企業のスキャンダルとして大々的に取り上げられた。日本的な「痛みに耐える=美徳」という道徳観の下、もともと忌避されがちだった医療用麻薬。「使うと依存症になる」という誤解も根強い。今回の一件では米国での乱用事情もあわせて報道され、負のイメージに拍車がかかった印象だ。だが、進行がん患者の70~80%が疼痛(とうつう)に苦しむとされる現状で、根拠なきタブー視は百害あって一理もない。痛みと麻薬、適切なアプローチとは何か考えたい。

70倍の格差

 「膝が痛いので、痛みを和らげるために輸入した」

 ハンプ元役員=6月30日付で辞任=は捜査段階でそう供述したという。国際宅配便に詰められていたのは、オキシコドンの錠剤57錠だった。

 オピオイド鎮痛薬と呼ばれる医療用麻薬の中でも、モルヒネと並ぶ強オピオイドに分類されるオキシコドン。国内では痛みの激しいがん患者に、保険診療での処方を限定している。

 一方、米国では抜歯後や関節痛でも処方され、頭痛程度でも服用する人がいるという。米ウィスコンシン大のグループの調査によると、2012年のオキシコドン使用量は、米国が1人あたり243・79ミリグラムで断トツだ。日本は71カ国中32位の3・6ミリグラム。日米で70倍近い格差がある。

「痛みの10年」の裏側で

 オキシコドンは、あへん(ケシ)由来のアルカロイド系の薬。90年代に米国で徐放錠(体内で徐々に溶けていく錠剤)が発売され、急速に普及した。

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