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【私の時間 シネマ】想像超えた〝人の壊れ方〟 兵士が極限状態で見たものは…「野火」塚本晋也監督

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【私の時間 シネマ】
想像超えた〝人の壊れ方〟 兵士が極限状態で見たものは…「野火」塚本晋也監督

映画「野火」の1シーン=(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

「加害者になる恐怖」表現したかった

 笑顔がやさしく、穏やかな空気を身にまとう人。だが、送り出す作品は強く熱い。最新作は20数年、温め続けた企画。「今しかない、今ぶち当てなければ、という思いで作りました」

 昨年のベネチア国際映画祭のコンペ部門選出作「野火」が8月1日、大阪市北区のシネ・リーブル梅田ほかで封切られる。大岡昇平氏の同名小説を映画化。第二次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、行くあてのない兵士が空腹と孤独、照りつける太陽と闘う極限状態で見たものを描く。リリー・フランキーらが出演。自身で監督と主演、制作、脚本、撮影、編集を担当した。

 「自分が戦争を描くなら、人を殺す立場になる、加害者になる恐怖を表現したかった。それこそ戦争の怖さと思っていた」

「動いているものが食べ物に見える」環境が嫌で手榴弾で自爆した兵士

 高校時代に読んだ原作に衝撃を受けた。「フィリピンの大自然の美しさの中で人間が愚かなことをしている。その対比が強く印象に残った」。市川崑監督作が映画化した「野火」(昭和34年公開)も見て、8ミリで自作していた映画少年は映画化を夢見た。

 プロの俳優兼監督となった20代後半から構想。10年前からレイテ島で戦争を体験した人々の話を聞き始める。中には取材当日に突然、来なかった人もおり、“傷”の深さを感じた。

 遺骨収集に同行したのを機に深い話が聞けた。「写真を見せていただいたが、手足が骨と皮。想像できる痩せ方ではない」。動いているものが食べ物に見える環境が嫌で手榴弾(しゅりゅうだん)で自爆したという人の写真も見て、想像を超えた“人の壊れ方”にがくぜんとしたという。

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