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【江戸っ子記者のなにわ放浪記】オウム「国家転覆」に、自衛隊は“幻の秘密作戦”で備えていた 地下鉄サリン20年

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【江戸っ子記者のなにわ放浪記】
オウム「国家転覆」に、自衛隊は“幻の秘密作戦”で備えていた 地下鉄サリン20年

営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線神谷町駅のホームで救助を待つ地下鉄サリン事件の負傷者ら=平成7年3月20日朝、東京都港区虎ノ門(画像を一部加工、芹沢伸生撮影) 営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線神谷町駅のホームで救助を待つ地下鉄サリン事件の負傷者ら=平成7年3月20日朝、東京都港区虎ノ門(画像を一部加工、芹沢伸生撮影)

 地下鉄サリン事件(平成7=1995=年3月20日)から20日で発生から20年が経過した。まさに「国難」であったあの事件は何を投げかけたのか。答えはいまだに出ていない。そのことを今も突きつける10年前に上梓(じょうし)された一冊の本に出会った。

 『地下鉄サリン事件戦記』(光人社)だ。現場に出動した陸上自衛隊第32普通科連隊の連隊長として、前線指揮にあたった福山隆氏(元陸将・平成17年、陸自西部方面総監部幕僚長で退官)が著者である。

 あの時、32連隊がサリンという化学兵器に使用される神経剤を使った世界初の大規模テロに現場で対処した記録が克明に記される。そして、なにより事件後も、オウム真理教が引き起こそうとした“国家転覆”に極秘で自衛隊が備えたことを知ることができる貴重な書籍である。

小銃1000丁を製造、旧ソ連製ヘリで空中サリン散布、国会襲撃…などの計画も練ったオウム真理教

 32連隊は当時、防衛省や自衛隊の統合幕僚監部など中枢がある東京・市ケ谷に駐屯地がある都心の精鋭防衛部隊だった。現在は、さいたま市に駐屯地を移している。

 未曽有の大規模テロに際して、連隊に届いたのは「災害派遣命令」だった。これは地震や台風などの天災で救助や支援活動を自衛隊が行うときに出される命令と同じである。

 同書から以下抜粋して紹介する。

 「毒ガスが散布され人が死亡しているというのに何故『治安出動命令』ではなく『災害派遣命令』なのか?(中略)犯人たちは、地下鉄に毒ガスを散布しただけでは満足せず、引き続き人が集まる場所に毒ガスを撒き散らしたり、銃や爆弾などの凶器を用いて無差別テロを継続するかもしれない。災害派遣命令で出動する場合は、法的に小銃や拳銃(弾薬含む)は携行できないので、万一、そうなった場合には、市民を守ることもできない」

 こうした疑問が次々と生ずる中で福山氏は前線指揮官として苦渋の決断を重ねたのだった。

 福山氏は出動可能だった32連隊の約120人の隊員と化学科部隊の約70人で4個の除染隊を編成。サリンがまかれ、甚大な被害が出ていた地下鉄各駅に出動を命じた。

 その際の詳細な模様は、現場に出動した自衛官たちの証言から紹介されている。事件発生後に、除染作業のため最初に突入し、警察の捜索や検証を実施できる状態にしたのは自衛隊である。その時の活動状況は自衛隊によってビデオ撮影され、メディアを通じて全世界に伝えられた。

 しかし、自衛隊のオウム事件への対処はこの日では終わらなかったのだ。同書の第8章「幻の作戦計画」は読み応えにあふれる。記されたことはあまり知られていないことだ。

 同書の内容から抜粋して紹介したい。

サリン事件で露呈、“日本の安保・治安維持、政府リーダーシップの欠如”

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