産経WEST

【東日本大震災4年】「今こそ学ぶとき」灘中高教諭退職し福島で奮闘 阪神大震災での恩師の言葉胸に 前川直哉さん

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【東日本大震災4年】
「今こそ学ぶとき」灘中高教諭退職し福島で奮闘 阪神大震災での恩師の言葉胸に 前川直哉さん

福島県の高校生らの学びを支援する「ふくしま学びのネットワーク」で事務局長を務める前川直哉さん=福島市(吉田智香撮影)

 東日本大震災で被災した高校生らの教育支援を展開する一般社団法人「ふくしま学びのネットワーク」(福島市)が4月、設立から1年を迎える。事務局長の前川直哉さん(38)は20年前、灘高校(神戸市東灘区)3年のときに阪神大震災を経験した。その後、灘中学・高校で教諭を務めたが、東日本大震災を機に福島に移り住んだ。震災から4年。「阪神大震災の時に恩師から受け継いだ『今こそ学ぶんだ』というバトンを福島の子供たちに渡したい」。子供たちの学ぶ意欲に応える場を提供している。(吉田智香)

 平成7年1月17日、阪神大震災が起きた。家族は無事だったが、兵庫県尼崎市の自宅マンションは家具が倒れ、両親が経営する喫茶店は半壊した。灘高では国公立大2次試験に向けた授業が始まる日だったが、周辺の被害は大きく、取りやめに。大学受験をあきらめかけたが、担任教諭らの励ましの言葉が心の支えになった。

 「人が伝えたことや学んだことはどんな災害があっても壊れない。だから、今こそ学ぶんだ。それが復興につながる」

 その言葉に後押しされ、東京大へ。卒業後は学習塾講師などを経て、非常勤講師として母校に戻り、後に教諭となった。

 東日本大震災が発生した23年の夏休み、同僚とともに岩手県釜石市で泥かきのボランティアに参加した。翌24年の春休みにはボランティア合宿に生徒を引率し、福島県相馬市などを訪れた。地元の県立相馬高校の生徒らとも交流し、福島とのつながりが生まれた。

 生徒を連れて何度も被災地を訪ねるうち、教諭になる原点となった阪神大震災の時の記憶がよみがえり「原発事故などで大きな不安を持つ福島の子供たちに『今こそ学ぶときだ』と伝えたい」と、心を決めた。退職して昨年4月、福島市に転居。地元の住職らと団体を立ち上げた。

 これまで、予備校講師や受験参考書を執筆した教諭らが高校生に勉強法を教える無料のセミナーを3回開催した。趣旨に賛同した講師らは手弁当で駆け付けてくれた。ボランティアに取り組む高校生が活動を発表するコンテストの企画や、大学生を高校に派遣し、学習法などを助言するプログラムにも力を入れている。

 福島県の高校生と接して感じるのは、震災後にさまざまな支援を受けた体験をもとに「支えられる側から、支える側になりたい」という意欲だ。そんな子供たちが学ぶことができ、さらに伸びるような環境をつくりたいと模索する。

 「成長した福島の子供たちが、誰かに『今こそ学ぶ』というバトンをつないでくれたら」。その思いを胸に今後も活動を続ける。

「産経WEST」のランキング