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【言葉ってすごいねII(1)】言っちゃったよ、ビッグマウスで崖っぷちに追い込んだ…町田樹の物語

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【言葉ってすごいねII(1)】
言っちゃったよ、ビッグマウスで崖っぷちに追い込んだ…町田樹の物語

 ソチ五輪フィギュアスケート男子個人で5位に入賞し、その後の世界選手権で銀メダルに輝いた町田樹(たつき)(24)=関西大=がインタビューに応じた。独特な言い回しから「氷上の哲学者」とも呼ばれて脚光を浴びた町田。日本男子フィギュア勢「第6の男」から、わずか半年で世界の表彰台に駆け上った躍進の陰には「言葉の力」があった。フリーの曲「火の鳥」のごとく羽ばたいたシーズンを終えた今も、言葉と向き合う。

「ボーカル曲」使用は謎

 5月2日、横浜市内のホテルの約束の場所に姿を見せた町田は、早くも次のシーズンを見据えていた。フィギュア個人では来季、歌詞入りの曲が解禁されるが、ルール改正がもたらすのは、選曲の幅が広がるだけの単純なものではない。歌詞という言葉が持ち込まれることによる本質的な変化を、鋭敏に感じ取っていた。

 「何の考えもなしにボーカル入りの曲に手を出せば失敗する。なぜなら歌詞があるということは、言語化されているということ。歌詞に『悲しい』って言葉が入っていたときに、『うれしい』という表現はもはやできない。そういう意味では表現の自由は狭まるかもしれない」

 フィギュアは音楽、身体表現を合わせた総合芸術だ。今季のショートプログラム(SP)曲で小説「エデンの東」をモチーフにしたが、著者のスタインベックの言葉を理解して美的完成度を高めるため、着想から1年間、小説の精読に費やした。アーティストを自負する町田らしいエピソードだが、言葉をめぐるルール改正にはどう臨むのか。

 「新しい領域にはリスクを伴うが、しっかりしたコンセプトや戦略があればすごく素晴らしいものができる。ぼくがボーカル曲を使うかは謎。来季の構想はしてますけど、まだ言いません」とけむに巻きつつも、町田流のビッグマウスで応じた。

 「新しいルールを巧みに利用して、今までのフィギュア界になかった競技用プログラムを作りますよ」

哲学書も読みこなす

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