「いつか女性だけで動かせる船を」内航海運で羽ばたく女性船主

WOMEN
停泊中の「第八大島丸」の甲板で乗組員と安全確認をする白石紗苗さん=大阪市大正区(奥清博撮影)

 土木や建築と並んで“男の世界”を強く感じさせる仕事に「海運」がある。そんな男社会の真っただ中に飛び込んで、船主として国内の港と港を結ぶ海上輸送「内航海運」に新風を吹き込むのが、白石海運(大阪市港区)取締役の白石紗苗さん(32)。「いつか女性だけで動かせる船をもてたら」。将来の夢は大きい。

 「うちの船がちょうど大阪港に帰ってきたので、見に来ませんか」

 6月中旬の午後、大阪市大正区にある大阪港の人工港湾「大正内港」に、ブルーと赤に塗り分けられた1隻の船が着岸した。白石さんが指をさしたのは、199トンの油送船「第八大島丸」。乗組員3人で、操船やエンジン整備、荷役の全てを行う。

 白石さんは、祖父が創業した会社の3代目。海運の仕事は、日本と外国との間で物や人を運ぶ「外航海運」▽国内の港から港へ貨物を運ぶ「内航海運」▽フェリーやクルーズ船などの「国内旅客船」-の大きく3つに分かれる。

 内航海運は、船で食料品や日用品、産業資材の石灰石や原油、鉄鋼、セメントなどを輸送。その量は国内貨物輸送の約4割を占める。

 白石海運の積み荷は創業以来、一貫して重油。第八大島丸と、497トンの大島丸の2隻のオイルタンカーが、国内各地の石油基地から工場に重油を運んだり、“海のガソリンスタンド”として外国の貨物船や客船に海上給油をしたりするのが仕事だ。「クイーン・エリザベス号にも給油しました」と誇らしげに語る。

 「70日乗船、20日休みのローテーションを年4回。乗船中は衣食住の心配はなく、まとまった休みが取れるので、旅行が趣味という船員は多いですね」と白石さん。自身も2年前まで船に乗り、荷役作業も担当。海技資格(機関・甲板ともに6級)を持つ。

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 白石さんが家業を継ぐ決意をしたのは、高校生のとき。創業者の祖父が他界し、父・昭二さん(62)が子供は娘2人で、後継ぎの男がいないことから、将来的に廃業を考えていると知ったからだった。

 「家業を継ぐ」という次女の思いに昭二さんは「まず大学で学べ」と説得。卒業後は貿易会社で2年間働いたのち、「修業のため」として徳島県の船員派遣会社で勤務し、平成24年9月、白石海運に入社した。

 しかし現場では、船のエンジントラブルの解決に時間をとられるなどし、知識と経験の無さを痛感した。「船員の先生は船員であり、船主になる資格は『船を愛(いと)おしむこと』と学びました」

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 内航海運業界は、船員の高齢化に直面する。50歳以上が5割を超え=表、若手の育成と世代交代が課題となっている。

 そうした中、白石さんが取り組むのが若い世代と女性船員の育成だ。ベテラン船員の伝統的なノウハウと、IT(情報技術)やAI(人工知能)を融合した「船」を理想に掲げる。その一歩として昨年12月に竣工(しゅんこう)した大島丸では、居室を広くし、談話室や女性船員用トイレも備えるなど、居住性を意識した設計に挑んだ。

 「船員11人は全員自社船員で、25歳の女性船員も1人います。来春にまた1人増えそうです」と晴れやかにほほ笑んだ。

 女性も男性もかっこいい

 海に囲まれた日本。全国に1100カ所以上の港があり、約5千隻の内航船が生活や産業に必要な物資を運ぶ。特に鉄鋼、石油など製造業に不可欠な基礎資材は国内輸送の8割を占める。「重油の輸送には、危険が伴います。だからこそ安全管理を徹底するのが私の役割」と話す白石さん。仕事をしている船員の姿は「女性も男性もかっこいい!」と話すその横顔が輝いていた。(服部素子)