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【正論8月号】日大アメフト報道の短慮 スポーツに潜む“暴力”を否定できるのか 評論家・小浜逸郎

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【正論8月号】
日大アメフト報道の短慮 スポーツに潜む“暴力”を否定できるのか 評論家・小浜逸郎

日本大学アメフト部の内田正人前監督=5月19日、大阪国際空港(安元雄太撮影) 日本大学アメフト部の内田正人前監督=5月19日、大阪国際空港(安元雄太撮影)

※この記事は、月刊「正論8月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

 だいぶ日数が経ってしまいましたが、日本大学アメリカンフットボール部の不祥事について触れてみたいと思います。またそれに関連して、昨年十月に起きた元横綱・日馬富士の暴行事件その他にも言及します。

 ただしここで取り上げたいのは、アメフト部員だった宮川泰介選手は内田正人前監督や井上奨前コーチの圧力の下でああいう行為に出ざるを得なかったので彼はむしろ犠牲者だとか、日大の田中英寿理事長以下、その強圧的で無責任な組織体質こそ早急に改められるべきだとか、スポーツマンシップを貫くことがビジネスとのかかわりに邪魔されて困難になっているとかいったことではありません。また、日本相撲協会内部の複雑な確執や前近代的な部屋制度や情報隠匿体質が問題だとか、暴力やパワハラで力の弱いものを窮地に追いやるような風潮を絶対に許すわけにはいかないといったことを論じようというのでもありません。

 これらの論調は、こうした事件があると、マスメディアを中心に必ずと言ってよいほど出てくる意見で、今回もうんざりするほど聞かされました。

 マスメディアは、これらのいわゆる「正論」を並べて、それがまだ視聴者や読者に受けると見込める間は、いつまでも番組を構成し続けます。しかし、本当の意味で議論が深められないまま、次なる衝撃的な事件が起きると、さっさとそちらに乗り換えてゆきます。

 これらの「正論」が間違っていると言いたいのではありません。筆者も、みな正しいと思います。ことにアメフト事件にかかわる日大執行部の、関西学院大学に対する態度や記者会見での対応のひどさは目に余るものがありましたし、田中理事長の「知らんぷり」の決め込みと事なかれ主義には、あきれてものが言えませんでした。あれでよく大組織の長が務まるなと思ったものです。一般の企業だったら、とっくに首が飛んでいるでしょう。

 しかし一連の流れを見ていて、ここには決して語られていないことがあるという印象を持ったことも確かです。言葉や映像は次から次へと飛び出してくるのですが、それが膨大な情報量であればあるほど、ある「語られないこと」を隠蔽する作用をもたらしている--そういう感じを抱いたのです。おそらく発信者たちは、ただ公式的な意味で事件を問題視するだけなので、そのことに気づいていないのでしょう。

スポーツという殺し合いのシミュレーション

 五月二十七日の午後、たまたま筆者は長い時間車に乗っていて、カーラジオで、NHKが特集として放送しているアメフト事件をめぐるスポーツ関係の識者たちの座談会をずっと聞いていました。事件からちょうど三週間後の日曜日です。アメフトやラグビーの監督経験者もいました。

 この座談会は午前中から始まっていたらしく、全部で少なくとも四時間は費やしたのではないかと思います。しかし筆者が聞いていた限りでは、スポーツ一般のあるべき姿について堂々巡りの「仲良しお話し合い」をやっているだけで、「ある二つの話題」にけっして言い及ぶことがありませんでした。これは推測ということになりますが、午前中の放送でもその話題は出なかっただろうと思います。 「ある二つの話題」とは――

(1)そもそもスポーツ、ことに集団競技なるものは、その発祥からして何をシミュレートしたものなのか。

(2)肉体と肉体とを直接激突させて勝負を競うような競技――柔道、相撲、レスリング、ボクシング、ラグビー、アメフトなど――は、他のスポーツとどこが違っているか。

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