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金メダルはどちらが先に 仲睦まじくも火花バチバチの高田裕士、千明夫妻

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金メダルはどちらが先に 仲睦まじくも火花バチバチの高田裕士、千明夫妻

 フジテレビのパラスポーツ応援プロジェクト「PARA☆DO!」が5月24日、東京・芝浦の港区スポーツセンターで開かれた。13回目の開催となった今回は、2020年東京五輪・パラリンピックのトライアスロン会場となる港区、パラスポーツを推進する東京都の「TEAM BEYOND」と協力し、地元・港区に在住する世界レベルのパラアスリート、高田裕士、千明夫妻をゲストに迎え、「みんなで応援しよう! 港区のパラアスリート 港区×TEAM BEYOND×フジテレビpresents PARA☆DO! TALK&LIVE」と題してイベントを行った。当日は港区を拠点に活動するチアリーディングチーム「芝浦エンジェルス」の幼児、少女のメンバーが、かわいらしくも躍動感あふれるチアリーディングを披露。会場を盛り上げた。

 トークショーに参加した出演者と、チアリーディングチーム「芝浦エンジェルス」

 トークショーに参加した出演者と、チアリーディングチーム「芝浦エンジェルス」

 来場した高田夫妻を「芝浦エンジェルス」のチアリーディングが迎えたオープニング。「ダイナミックに動いているけど、シンクロしている。バネがあってすごい」と目を見張った裕士選手は、「いま立ち上がったよ」「いまバック転したよ」などと、目が見えない千明選手にメンバーの動きを事細かに伝えた。「おお、いまグルッっとまわったんだね」と相槌をうつ千明選手。「わたしは見えないけど、ダンナから『いま、こうなっているよ』と聞いて、ポン、ポン、ポーンッと聞こえる足音やみんなの掛け声がすごく素敵だなと思いました」

 見るからに仲睦まじい夫婦だが、一方でパラアスリートとしては最大のライバル関係にある。戦う舞台は異なるが、どちらが先に国際大会で「金メダル」を獲得するかを競い合う高田夫妻は、そんな“微妙”な関係でもある。

 「こないだ(2016年)のリオデジャネイロ・パラリンピックでも、『8位入賞おめどうとう! でも、オレ7位だから』って。信じられない」

 千明選手が笑って振り返るやりとりが、なんとも微笑ましい。

 ともに日本記録を保持し、世界の頂点を見据える2人。夫の裕士選手(32=エイベックス)は、今年7月にトルコで開かれる聴覚障害者のオリンピック「デフリンピック」に、日本代表として3大会連続で出場する。種目は男子400メートルハードルだ。昨年の世界選手権では7位入賞を果たした。

 妻の千明選手(32=ほけんの窓口)は、リオ・パラリンピックの女子走り幅跳び(全盲クラス)で8位に入賞し、東京大会での優勝を目指す。

 2人の「縁」の始まりは、国体の場で千明選手が裕士選手に「手話を教えてほしい」と頼んでから。裕士選手は先天的に耳が聞こえないが、幼少時の両親の教育により、よどみなく話すことができる。聴覚障害の選手たちとコミュニケーションをとりたいと思っていた千明選手は、同い年で知り合いだった裕士選手に先生役を頼んだ。

 トークショーに参加した出演者と、チアリーディングチーム「芝浦エンジェルス」

 裕士選手(左)の手話を両手で確認する千明選手

 裕士選手の手話の動作を、両手で触って確かめる千明選手。当時の様子を会場で再現すると、イベントの司会を務めた田中ウルヴェ京さん(ソウル五輪シンクロナイズドスイミング銅メダリスト)から、「それってナンパ?」との質問が浴びせられた。

 これに対して千明選手は「まったくもって違います! もはや顔が見えていませんので、ナンパの方向にはいきません!」と強く否定。田中さんが「ダンナさんはイケメンですよ」と畳みかけても、「(耳が)聞こえていない人と(目が)見えていない人は真逆ですから、どういうところに行って、どういう生活をしているのかを知りたかったんですね。たまたま、声が出るのがダンナだったわけですよ」と“解説”した。

 2人は言葉と手話で意思疎通を図る。「ぼくから話しかけるときは声を出します。妻が話しかけるときは、声を出して手話も併用して話しています」(裕士選手)。この日も息の合った軽妙なトークを繰り広げ、会場の笑いを誘うこともしばしばだった。

 手話を契機に近づいた2人は2008年に結婚。いまは小学3年生の長男・諭樹(さとき)くんと3人で港区に住んでいる。港区は新しい施設が多く、バリアフリー化が進んでいる地域のひとつだ。千明選手は「点字ブロックだったり、音声信号も多くて住みやすい。わたしたちが住んでいるところに、もうちょっと音声信号があれば、なおいいですね」と評価する。

 今回のイベントを主催した港区の武井雅昭区長は「だれもが身近にスポーツを楽しめる環境整備に努めているところです。みなさんが今、来ていただいているアリーナも車椅子スポーツであります、車椅子のバスケットボール、バドミントンをできるように改修をするところです。改修に合わせまして、競技用の車椅子や、車椅子の方でも使用できる卓球台なども購入して、障害者スポーツの普及に取り組んでまいります」とあいさつ。パラスポーツのハード面の整備も着実に進んでいきそうだ。

東京大会に向けて積極的に“おもてなし”を

 パラリンピックを迎えるにあたっては、ハード面だけでなく、気づかいというソフト面も重要になる。“おもてなし”の精神に代表されるよう、一般に日本人は親切だが、障害者への気づかいという面では、海外と比べて消極的な面もある。

 「外国の方は言葉が通じない中でコミュニケーションをとることに慣れているような気がしますね。わたしが困っていると、スーッと近付いてきて、声をかけてくれます。日本の人は、見てくれているのでしょうけど、声をかけていいものか、どう声をかければいいのか、と行動に出せない方が多いのではないでしょうか。バスなどでガイドさんと一緒に立っていると、ガイドさんを通じて『席に座りますか』と声をかけてもらう機会が多いんですよ」(千明選手)

 例えば、地続きの欧州であれば、普段から母国語と異なる言葉を話す人とコミュニケーションをとる機会が多い。日本語でほぼ事足りる日本とは、国民性も含めて育った環境に違いがあるのだろう。

 では、困っている視覚障害者を見かけたときは、どう接するのがいいのか。

 司会の田中さんから「急に触ったら、びっくりするかな? 『触ります』と言った方がいいの?」と聞かれた千明選手は「『こんにちは』と言いながら、トントンと触れてもらえるといいですね」。白杖(はくじょう)を持っている手とは反対側の腕や肩にポンポンと軽く触れるのがいいそうだ。視覚障害者にとって白杖は「目」の役割を果たす。手を触れたはずみで白杖の位置がズレると、いまいる場所や重要な情報がわからなくなってしまうこともあるからだ。

 90分に及んだイベントでは、高田夫妻が地元のちびっこに速く走るコツを伝授した陸上教室や、PARA☆DO!公式アーティストの清貴さんのライブも行われ、締めくくりは芝浦エンジェルスがパフォーマンスの後に「わたしたちは高田さん夫婦を応援しています」と、声と手話でエールを送り、エンディングを飾った。

 トークショーに参加した出演者と、チアリーディングチーム「芝浦エンジェルス」

 千明選手(左から2人目)が大好きな一青窈の『ハナミズキ』を歌うPARA☆DO!公式アーティスト清貴さん(右)。左端は裕士選手。右から2人目は司会の田中さん

 住民が同じ地域に住むアスリートを後押しした新たな試み。裕士選手は「いままでになかったことなので、地域に住む身としてはとても励みになります。こうしたイベントが増えることを期待します」。千明選手も「パラリンピックやデフリンピックがどういうもので、どういう人間がやっているかを少しでも知ってもらうことで、どんどん輪が広がっていくと思います」と今後の発展に期待した。

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