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【走り出す日本力】[ウエアラブル] 離れていても一心同体

走り出す日本力

明日を拓く次世代技術

【ウエアラブル】離れていても一心同体

【ウエアラブル】離れていても一心同体

千葉大学の並木明夫准教授らが開発しているロボット遠隔操縦システム。左奥の操縦者の指先の微妙な動きを再現している(多重露光で撮影)=千葉市の千葉大学(大西正純撮影)

離れていても一心同体

 遠くのロボットが操縦者と同じ動きで作業し、操縦者は機械を通してロボットの“五感”を共有する―。開発が進む着用型(ウエアラブル)機器が、人間の能力や感覚を無限に広げようとしている。

ロボットと“五感”共有

 「起動します」

 かけ声とともに電源を入れると、高さ約1メートルの人型ロボットが、ヘルメットや手袋を着けた操縦役の学生と同じポーズをとった。ロボットの“視界”は、学生が身につけたヘルメット内に立体画像で表示され、学生が物を握る動作をすると、ロボットが目前のペットボトルを5本の指で器用に包みこんだ。

 自動ドア用センサーなどを製造する旭光電機(神戸市)と、千葉大が共同開発したウエアラブルのロボット遠隔操縦システムだ。背負った約50センチ四方の制御装置から、両手と頭に伸びた4本のチューブや、手袋内の複数のセンサーが、操縦者の動きを感知してロボットに指示を出す。

 千葉大の並木明夫准教授は「人間の動きの再現に加え、ロボット自体が考える能力が重要だ」と語る。例えば、人間の細かな反応から動きを予測するプログラムを入力して操作時の時間のズレをなくし、動く対象物を操作する場合でも、違和感なく扱える。3年以内の実用化を目指す。

負担減らす「人工筋肉」

 腕時計型端末「アップルウオッチ」など、従来、ウエアラブル機器は身につける情報端末としての機能が主流だった。だが、東大の板生清名誉教授は「情報端末の機能はスマートフォンでほぼ完結し、小型化に向かう。今後は人間の手足や皮膚の機能を拡張する『環境ウエアラブル』が必要になる」と語る。

 代表例が、日本が得意とするロボットの技術を融合した遠隔操作や、人間の力を増やす「人工筋肉」だ。人工筋肉は介護者の負担軽減などを目指しており、中大の中村太郎教授は50グラムと軽量で、最大約200キロの力を出せるウエアラブル機器を開発した。

 腕に着けた長さ18センチ、直径1.2センチのゴムチューブに空気を注入。縦方向の伸びを抑制したチューブは筋肉のように収縮して、肘を曲げる際の力を支える。工場作業員らの使用に加え、「人工筋肉で動きを制限して固さや粘りなどを再現すれば、スポーツやリハビリの指導に活用できる」(中村教授)という。

 さらに、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府)などは、脳波などの計測機器を組み込んだ装置を頭部に装着し、「明かりをつけたい」「テレビのチャンネルを変えたい」などの“意思”を電気信号に変えて、機器を操作するシステムを開発した。日本発のウエアラブルが、生活を変え、人間の可能性を大きく広げそうだ。

(会田聡)

【用語解説】ウエアラブル

 腕や胸など体につけることを想定した端末(デバイス)。メガネや腕時計に加え、衣類に組み込むことで血圧や脈拍などの健康管理にも利用できる。

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