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【走り出す日本力】医工連携 中小企業、途上国のニーズに応える

走り出す日本力

世界に羽ばたく“日本流医療”

医工連携 中小企業、途上国のニーズに応える

医工連携
中小企業、途上国のニーズに応える

新たな医工連携概念図

途上国向けの医療機器の開発をするフジタ医科器械の前多宏信社長。スマートフォンやタブレット端末を利用した生体モニター機器を構想中だ=東京都文京区

途上国向けの医療機器の開発をするフジタ医科器械
の前多宏信社長。スマートフォンやタブレット端末
を利用した生体モニター機器を構想中だ
=東京都文京区

 医療現場のニーズに高い技術力を持つ中小企業が応える「医工連携」の現場で、国際化の動きが始まっている。開発途上国などの需要を拾い上げ、製品化につなげようというものだ。同様のニーズを持つ他国に商機が広がるだけでなく、簡素化や安価化が進めば国内でも市場が見込める。安倍政権は医療機器の海外展開を進めており、こうした動きは新たな国際貢献の一つとして注目が集まる。

 「大手メーカーは高い性能を持った機器を開発しがちで、日本の機器は途上国では性能や価格が過剰になりやすい。現地の医療現場にフィットする機器の開発は少なかった」と現状を指摘するのは、「日本医工ものづくりコモンズ」の柏野(かしの)聡彦理事だ。ものづくりコモンズは、医師などの医療現場と高いものづくり技術を持つ中小企業を結びつけ、新たな医療機器の開発を支援している。

 この活動に国立国際医療研究センター(東京都新宿区)が今年から加わった。同センターは海外から医師の研修を受け入れたり、日本人医師を派遣するなど、開発途上国を中心に医療支援を長年行ってきたため、海外の医療現場の実情に詳しい。3月にはコモンズと協定を結び、同センター病院での国内のニーズのみならず、海外のニーズを日本のものづくり現場につなぐプロジェクト「MINC(ミンク)の会」が始まった。

 第1弾として開発が進むのが、途上国でも普及が進むスマートフォンなどの多機能端末を利用して患者の体の状態をモニターする機器だ。開発を進めるフジタ医科器械(文京区)の前多宏信社長は、「これまでの医療機器はしっかりした装置が必要だったが、多機能端末を使えばソフトウエアを乗せ換えることでさまざまな用途に対応できる」と語る。プログラムの更新や取扱説明書をインターネットで配信することも容易だ。

 主に脳外科領域の手術用器具を開発してきた同社だが、生体モニター分野でも知的財産を所有。開発には時間も費用もかかるためこの分野を手がけるつもりはなかったが、「MINCの会」で海外の需要や将来性などの情報が正しくもたらされ、開発にかじを切った。

 国際医療研究センター研究所の石坂幸人副所長は「日本製の機器を売ることより、海外のニーズに応えようとする姿勢が大事」と語る。途上国のニーズは、医療アクセスが悪い国内の僻地(へきち)や医療機器が整っていない訪問診療の現場と共通することも多い。機器が小型化、簡素化され値段も安価になれば、訪問診療で気軽に持ち運ぶことも可能になる。「MINCの会」はこうした国内市場の拡大も視野に活動を進めている。

(道丸摩耶)

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