産経ニュース

【走り出す日本力】リニア・新幹線 安全で快適、トップセールスも奏功

走り出す日本力

高速鉄道の輸出

リニア・新幹線 安全で快適、トップセールスも奏功

リニア・新幹線 安全で快適、トップセールスも奏功

リニア試乗後に感想などを述べる(左から)フォックス米運輸長官と石井啓一国土交通相=11月8日(JR東海提供)

リニア・新幹線
安全で快適、トップセールスも奏功

日本が受注を目指す高速鉄道計画(国土交通省まとめ)

 「これは“輸送の奇跡”だ」

 11月8日、山梨県内の実験線でリニア最新車両に試乗した米国のフォックス運輸長官から驚きの声が上がった。最高速度は時速505キロ、車内は静粛そのもの。「大変、印象深い日だった」。長官の称賛は試乗後も続いた。

 日本政府はJR東海と協力し、米政府に首都ワシントン-メリーランド州ボルティモア間での超電導リニア技術の導入を働きかけており、この日の試乗で、米国側との高速鉄道整備などを話し合う「日米鉄道協力会議」設置にこぎつけた。石井啓一国土交通相は「日本の技術の高さを実感してもらえたのでは」と手応えを口にする。

 世界の鉄道需要は2011(平成23)~13年平均で20兆6千億円だが、17~19年には2割増の24兆2千億円にまで膨らみ、その後も急速な拡大が予想されている。巨大市場をめぐる競争は激化が見込まれ、独シーメンスなど「ビッグ3」と呼ばれる巨大企業に加え、中国も国内の2大メーカーが合併して戦闘態勢を整える。

 日本も負けてはいない。長年にわたり新幹線の安全性や定時運行、快適性を支えてきた技術水準は折り紙付き。最近は、これまで不得手としてきた「なぜそこまでの技術が高速鉄道に必要か」といったアピールにも積極的だ。

 牽引(けんいん)役は安倍晋三首相を筆頭にした「多彩で強力なトップセールス」だ。資金面でも、官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)を設立したほか、円借款手続きの迅速化や政府保証の例外的免除など、選択肢の充実を図ってきた。

 こうした積み重ねは、徐々に実を結びつつある。

 米テキサス州のダラス-ヒューストン間(385キロ)を結ぶ約150億ドル(約1兆8千億円)の高速鉄道計画はJOINによる4千万ドル(約49億円)の出資が11月21日に決まった。米側の事業会社はJR東海の新幹線システム採用を出資の前提としており、政府関係者は「世界のショールームである米国での成果は大きい」と期待を高める。

 12月12日には、インド初の高速鉄道計画における新幹線方式の導入が正式に決定した。同国西部にある最大の商業都市ムンバイ-アーメダバード間(約505キロ)を結ぶ路線への技術導入で、総事業費9800億ルピー(約1兆8千億円)のうち、81%に当たる最大約1兆4600億円は円借款で支援する。

 高速鉄道をめぐっては、クアラルンプール(マレーシア)-シンガポール間や、タイのバンコク-チェンマイ間など、今後もアジアを中心に大規模プロジェクトがめじろ押しだ。国交省幹部は「引き続き、輸出先の相手国と密な関係を築いていく」と気を引き締める。

 都市鉄道の分野でも日本の技術が既に海外に浸透している。

 タイ・バンコク中心部から北西部に延びる「パープルライン」は丸紅と東芝、JR東日本の企業グループが車両製造とメンテナンス契約を勝ち取り、16年に開業予定だ。インドネシア・ジャカルタではMRT(大量高速鉄道)を日本の企業連合が受注し、18年の開業を目指す。12月9日には、三井物産がブラジルの企業グループと進めてきた都市鉄道整備事業にJR西日本などが参画を発表した。

 鉄道インフラは車両製造や運行システム、維持管理に至るまで裾野が広く、多業種に恩恵が及ぶ。国内市場が縮小する中、日本政府は今後も鉄道分野をインフラ輸出における柱の一つに位置付け、激化する受注競争を勝ち抜く構えだ。

(佐久間修志)

recommend