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【走り出す日本力】バス活用ART、世界にアピール 東京五輪に向け準備着々

走り出す日本力

自動運転車 加速する技術

バス活用ART、世界にアピール 東京五輪に向け準備着々

バス活用ART、世界にアピール 東京五輪に向け準備着々

舛添要一知事も試乗し、都庁周辺で行われた東京都の燃料電池バスの実証実験 =7月、東京都新宿区

バス活用ART、世界にアピール
東京五輪に向け準備着々

 近未来の乗り物として、生活に身近な路線バスを活用した次世代都市交通システム(ART)が注目されている。国内の自治体が市街地の渋滞緩和や利便性の向上、環境対策などから新たな交通手段を模索する中で、巨額の建設費用を必要としないことが大きな魅力だ。「日本の最先端技術のショーケース」として、東京都では2020年の東京五輪に向けて、ART導入の準備が進んでいる。

 改札を抜け、低床のプラットホーム型の停留所に入ると、案内板に次に到着するバスの情報が表示される。

 「3分後に到着」

 「2連結車両」

 「車いすの方4人乗れます」

 しばらくすると、水素で走る燃料電池バスが、静かな電気モーターの音を立てて滑り込むように停留所に入ってきた。

 停留所手前からはレールを進むように自動運転システムで誘導され、ホームぎりぎりに寄せて到着。車体が沈み、一斉に開いたドアから車いすの人も乗り降りする。改札式だから、停車時間のロスも少ない。加減速が滑らかで、ブレーキも改良されて揺れは少ない。信号が自動的に青になり、定時運行が確保される。

 内閣府や東京都が、都心と臨海副都心の五輪関連施設を結ぶ移動手段として、2020年の運行を目指すARTのイメージだ。

 ARTは、政府の成長戦略の一つに位置付けられ、「国内産業の裾野拡大を成長戦略につなげる」(内閣府の土田真也・政策調査員)狙いがある。このため、燃料電池バスや自動誘導システムなどの関連技術の開発に加え、海外メーカーしか手がけていない連結バスの国産化も課題だ。

 技術的な壁を越えられても、メーカーにとっては、収益に見合うだけの需要がなければ参入は難しい。その起爆剤として実用化第1号に向けて建設が進むのが、虎ノ門の再開発地区から、晴海の選手村予定地を通って、お台場の競技施設に抜ける都市計画道路環状2号線ルートだ。

 東京都は、晴海地区での住宅開発と人口増に対応する交通インフラが追いついておらず、「2020年がゴールではなく、五輪後の都民の生活の足として整備したい」(松本祐一・都交通計画調整担当課長)。内閣府も、東京都での成功をモデルにARTを全国の地方都市に広めたい考えだ。

 国や地方自治体の財政赤字も背景に、地下鉄を掘り、モノレールを建設するという公共事業優先の時代は終わりつつある。五輪に向けて技術力を結集し、環境や交通弱者といわれる高齢者や子供、体の不自由な人に優しい交通インフラづくりを世界に示す取り組みが動き出している。

(大塚昌吾)

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