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【河崎真澄の緯度経度】調略+恫喝などで相手を屈服 中国の「シャープパワー」を警戒せよ

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調略+恫喝などで相手を屈服 中国の「シャープパワー」を警戒せよ

河崎真澄の緯度経度更新
習近平総書記(新華社=共同) 1/1枚

 西側の民主社会にカミソリのように鋭利に食い込んで政治を分断し、世論操作を狙う中国の強引な対外戦略が「シャープパワー」と名付けられ、注目されている。米政府系の「全米民主主義基金(NED)」が昨年12月に公表したリポートで使った造語だ。

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 対外戦略として一般的に知られるのは、強大な軍事力で強制力を生み出す「ハードパワー」と、ライフスタイルや価値観、魅力的な文化や伝統に共感してもらうことで国際社会から信頼を得る「ソフトパワー」だ。

 ハードやソフトのみならず、「調略(ちょうりゃく)」「恫喝(どうかつ)」「いやがらせ」を巧みに組み合わせ、相手の側から中国に媚(こ)びへつらうよう転向させる戦術こそ、中国のシャープパワーなのだという。

 英誌エコノミストはシャープパワーの例として、昨年死去した中国の民主活動家、劉暁波氏をめぐるノルウェーとの関係を挙げた。

 国家政権転覆扇動罪で服役していた劉氏にノーベル平和賞を授与したノルウェーに対し、中国は「ノーベル平和賞は西側の利益の政治的な道具だ。中国社会を裂こうとしている」(環球時報)と猛反発。サーモン輸入禁止など経済的圧力や外交関係の寸断などのいやがらせを続けた。ノルウェーは対中関係で正常化を求め続け、中国に屈する道を選ばざるを得なかった。

 ただ、“歴史戦”を中国に仕掛けられて久しい日本からみれば、なにをいまさら、との印象も受ける。日本で「三戦」と呼ばれる中国の対外戦略は「シャープパワー」に近いものだ。

 「三戦」は例えば、反日デモや抗日行事を通じて、中国国内に加え日本人の意識にも影響を与える「世論戦」、尖閣諸島(沖縄県石垣市)がパンフレットの地図に描かれていないと攻撃して日本企業にいやがらせし、意欲をそぐ「心理戦」、南シナ海の領有権主張で独善的な解釈を一方的な自国の法に求める「法律戦」などだ。

 過去の戦争に対する一部の日本人の“贖罪(しよくざい)意識”もそこに利用されてきた。

 日本の中国研究者やメディアに対して、反中的な勢力には研究や取材を妨害したり、入国に制限を加えたりするなどのいやがらせを繰り返し、親中的な言動をする人物のみを優遇することで批判を封じ、“たいこ持ち”を増やす手口だ。

 古くは「孫子の兵法」にある「戦わずして勝つ」との教えも、実はシャープパワーではないか。数千年前の思想を21世紀の国際社会にもぶつけてきたのだ。

 一方で、シャープパワーとの呼び名で、欧米でも改めて中国の“本質”が認識され、警戒レベルが上がったことは歓迎すべきだ。