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「貧しさ競う地方役人」中国を代表する作家が告発する中国社会と言論統制の実態

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「貧しさ競う地方役人」中国を代表する作家が告発する中国社会と言論統制の実態

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中国の作家、余華さん(海老沢類撮影) 1/3枚

 笑うに笑えない行政のおかしな「規定」がはびこり、言論への厳しい締めつけも依然存在する-。現代中国を代表する作家の1人、余華(ゆい・ほあ)さん(57)の新しいエッセー集「中国では書けない中国の話」(飯塚容訳、河出書房新社)は、近年の中国社会が抱えるさまざまな矛盾を静かに告発する1冊だ。来日した反骨の作家に、現在の同国の実情や言論状況などについて聞いた。

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公権力の傲慢さ

 「中国では書けない中国の話」に収められたエッセーは28編。米紙ニューヨーク・タイムズに発表した文章を中心にして編まれている。

 「中国は永遠に書くテーマには事欠かない。読者は中国人ではない、というのが前提だから、中国について、より幅広く理解してほしい気持ちがありました。文章の結びには笑いや含みをもたせ、楽しく、かみしめながら読めるものになれば、と」

 実際、話題は多岐に渡っている。書籍や新聞、映画など媒体によって当局の検閲の厳しさに差が出る理由を理路整然と説き起こす。その一方で、日本や欧米の強い批判を浴びても、海賊版が氾濫し続ける意外な事情もつづっている。〈中国における権力の傲慢な態度〉(2013年5月発表)と題した文章で告発するのは中国の行政をつかさどる公権力の傲慢さだ。

公務員採用の合格基準にバストの均整

 〈社会問題がいかに複雑化していても、理屈が通りさえすればいい。社会に受け入れられるかどうか、考えようともしない。反対の声が上がる可能性は知っていても、気にかけない。中国社会では長らく、公権力が個人の権利を侵害してきたからだ〉

 余華さんはそう記した上で、権力を行使する地方政府がつくったおかしな「規定」を俎上にのせる。頼みの「理屈」にすら疑問符が付くような規定もあるからおかしい。

 公務員採用時に行う身体検査の合格基準になぜか〈女性は両乳房の均整がとれていること〉という項目を入れた省があったかと思えば、ウエストが80センチを超えた警官をリストラするという命令を出した某市公安局の機動隊もある。中学生の退学率を引き下げるため、中学を卒業していない者の結婚を認めない、という通知を出した県もあるという。

 あげくは、交通事故の発生率を下げるために-という理由で、「黄色信号無視」を6点の減点とする交通法規が施行されたこともあるという。

 黄色信号は「警告」であって通行禁止を示すものではない▽ニュートンの慣性の法則に背いている▽より多くの追突事故を招くだけ…。そんなもっともな批判がメディアや世論から上がり、結局、黄色信号無視のドライバーには指導を行うことにし、減点は見合わせることになったという。

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  • 「中国では書けない中国の話」余華著、飯塚容訳(河出書房新社・1600円+税)
  • 中国の作家、余華さん(海老沢類撮影)