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【鼓動】中国広州にアフリカ人不法滞在10万人超 犯罪増、地元住民とトラブル

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【鼓動】中国広州にアフリカ人不法滞在10万人超 犯罪増、地元住民とトラブル

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 中国南部の広東省広州市に三元里という街がある。アヘン戦争中の1841年、上陸した英国軍と地元住民が武力衝突した場所で、中国政府に「愛国主義教育」拠点にも指定されている。それから170年余り-。この街は今、「リトルアフリカ」との異名で呼ばれ、再び外国人と対立している。10万人以上という不法滞在のアフリカ人が住み、地元住民とのトラブルやさまざまな犯罪が起きている。現地から報告する。(中国南部三元里 矢板明夫、写真も)

 広州中心部にある広東省政府庁舎から西へ徒歩で約20分。歩道橋を渡ると、中国とは思えない光景が目の前に広がる。行き交う人々の半分以上が黒人系で、強い香水の臭いが鼻につく。

 広東省当局者によると、省内には推定で30万人以上のアフリカ人が住んでいるが、そのうち合法的な滞在資格を持っているのはわずか3万人前後。不法滞在率は実に90%を超える。

 5年前に観光ビザで中国に入国したというコンゴ出身のケン氏(39)は期限が過ぎても帰国せず、不法滞在者となった。家電製品の修理工だった彼は一攫千金(いっかくせんきん)を夢見て広州に到着した直後、旅券など身分を証明できる書類を全て破棄したという。捕まっても本国に強制送還されないためだ。

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 ケン氏は今、広州で雑貨や衣料を仕入れて本国に郵送し、親族を通じて売りさばいている。「故郷にいたときより何倍ものお金を毎月稼げるので国に帰る予定はない。中国人と結婚して、ちゃんとした滞在資格を手に入れたい」という。

 しかし、ケン氏の友人の中には麻薬や覚醒剤の密売など犯罪に手を染めている者も少なくない。中国南部の麻薬犯罪の多くは、広東省のアフリカ人が関わっていると指摘する中国当局者もいる。

 愛知県稲沢市の男性市議は2013年10月、広州の空港で、スーツケース内のサンダルの底などに覚醒剤3・3キロを隠していたとして逮捕された。本人は「覚醒剤が入っているとは知らなかった」と主張。知人のナイジェリア人を通じてマリ人からスーツケースを受け取り、上海経由で日本まで運ぶことになっていたと供述しているという。

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 三元里では、中国人住民とアフリカ人の間でトラブルが絶えない。タクシーの男性運転手は「中国人女性がレイプされる事件や、金品が奪われる事件もよく起きている」と話す。

 インターネットでは「黒人は出ていけ」「広州の植民地化に反対する」といった激しい差別的な書き込みが多い。アフリカ人に物を売らない店や、診療を拒否する病院などもある。

 09年7月、あるアフリカ人男性がパスポート調査を逃れるためにビルから飛び降りて死亡した事件を機に、アフリカ人約200人が派出所を襲撃する事件も発生し、それ以降、対立はさらに深刻化したという。

 アフリカ人問題を取材する地元紙の記者は「こうしたトラブルは今後、さらに増えるだろう。外国人の入国審査と管理する責任を果たしていない政府に大きな責任がある」と指摘する。

 1980年代から90年代にかけて、中国人不法滞在者が日本や米国などでさまざまな社会問題を起こしたが、今では中国自身が外国人の不法滞在で頭を抱えるようになっている。

■中国のアフリカ人 アフリカ人の多くは広州、深●(=土へんに川)、仏山など広東省内に住む。雑貨やアパレルの卸売市場とモスク(イスラム教礼拝所)がある三元里周辺が最も多いという。

 広州周辺にアフリカ人が増えたのは、1990年代に起きた東南アジアの金融危機がきっかけ。中国政府が対アフリカ輸出を手掛け始めた時期と重なり、東南アジアで仕事を失ったアフリカ人貿易商らが中国に来るようになった。中国政府が2006年に発表した「対アフリカ政策文書」に従い、アフリカ人の入国ビザ審査が大幅緩和されたのも追い風になったという。

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