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【朝鮮半島ウオッチ】大統領訪朝で注目のモンゴルと北朝鮮の複雑怪奇な関係

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【朝鮮半島ウオッチ】大統領訪朝で注目のモンゴルと北朝鮮の複雑怪奇な関係

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 エルベグドルジ・モンゴル大統領訪朝の内幕に熱い視線が集まっている。日本の安倍晋三首相と大統領の親密な関係を背景に日本人拉致問題に関する仲介に期待や、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物再入札で登場したモンゴル企業の存在で、日本→モンゴル→北朝鮮の「点と線」が急浮上したがその実態はナゾが多い。一体、モンゴルと北朝鮮はどんな関係なのか?(久保田るり子)

 モンゴルは密輸基地? 工作員指令やマネーロンダリング疑惑も

 9月中旬にモンゴル入りして北朝鮮との関係を調査した宮塚利雄・山梨学院大教授によると「今夏も今秋もモンゴルは対北食糧援助を行った。ウランバートル市内の建設現場に北朝鮮の労働者が急増中だ。北朝鮮は経済関係の強化を求めているようだがモンゴル側は『あえて貿易というようなモノもない』としており彼らには政治的な意味合いが大きいようだ」という。

 モンゴルと北朝鮮は今年9月で国交樹立65周年を迎えた。北朝鮮によっては建国(1948年)直後に国交を結んだ旧ソ連に次いで古い友人、正確にはスターリン時代の衛星国だったという兄弟関係だ。

 冷戦崩壊でモンゴルは1990年に民主化し韓国と修好したため、北朝鮮との関係は悪化した時期もあるが、11年前に修復し友好協力議定書を交わしている。首都ウランバートルには韓国、北朝鮮の大使館があり、モンゴルでの“南北接触”も多い。

 大統領の訪朝は9年ぶりだが、昨年は崔泰福最高人民会議議長がモンゴルを訪問し、海のない同国に対して北朝鮮・羅津港の賃貸を持ちかけたとされる。

 公式往来とは別に、北朝鮮にとってモンゴルは、中国経由で陸路、外部につながる“人、モノ、カネの密輸ルート”としても知られている。

 北朝鮮からの脱北者ルートとして有名なほか、韓国に入国した元北朝鮮要人の暗殺計画の実行犯が実はモンゴルで北朝鮮の工作部署、偵察総局から指令を受けていた-などという事件も発生している。

 また、北朝鮮はウランバートル-北京を往来する列車を使って漢方薬などの密輸を企て、モンゴル当局によって摘発されることも少なくない。さらに、北朝鮮外交官がモンゴルに米ドルや日本円を持ち込もうとして発覚するケースもある。これは偽札疑惑やマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑が持たれている。両国関係はこうした暗部を抱えて拡大しているのだ。

 モンゴルの狙いは?北朝鮮の思惑は?拉致問題は動き出す? 

 一方で、日本は対モンゴルODAの最大ドナー国だ。民主化以降の約20年間の日本によるモンゴル支援は円借款だけで780億円、無償資金援助は990億円に上る。同国はレアメタル、レアアースなど豊富な鉱物資源を持つため、日本はモンゴルとの関係を、『互恵的、補完的な資源エネルギー外交』の相手国と位置づけているからだ。

 現在、日本のODAによる資源開発の人材教育プロジェクトが進んでいるほか、都市機能の整備事業として新ウランバートル空港建設計画なども日本の有償資金で進んでおり、近年は建設ラッシュである。その活況のウランバートル市内に北朝鮮の労働者が駆り出されているという構図だ。宮塚教授によると、ウランバートル市内には日本の無償援助で建てられたカシミヤ工場があるが、ここにも北朝鮮労働者が入っている。

 日本モンゴル関係に詳しい貿易関係者はこう話す。

 「北朝鮮はこうした日本とモンゴルの関係をみてきた。北朝鮮関係者が『われわれも新空港建設を日本に期待したい』などとムシのいいことを言っているようだ。いずれにしてもモンゴルとしては、北朝鮮との深い関係を今後の対日政策に生かそうと考えているようなのだ」

 エルベクドルジ大統領と安倍首相は、今年3月の安倍氏のモンゴル訪問に次いで9月末の大統領訪日では安倍氏私邸訪問で親交を深めた。その間に拉致対策本部幹部と古屋圭司担当相のモンゴル訪問が続いた。大統領は拉致問題の解決に一役買うことにも前向きだと伝えられている。

 金正恩第一書記にとって指導者就任(昨年4月)以来、初の外国元首訪朝にもかかわらず北朝鮮は首脳外交を発表していない。北朝鮮側の何らかの不満の表れとも取れる。

 韓国メディアは一連の動きを『モンゴル・日本・北朝鮮の三角コネクション』などと名付けているが、金正恩政権を取り巻く国際環境は厳しい。北朝鮮は対中、対米外交で行き詰まり経済制裁の国際包囲網できゅうきゅうとしている。日本としてはじっくりと好機到来を見定める必要がある。

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