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なぜトノサマガエルは観測されないのか 季節の生物が2020年に対象外に 松江で8年連続未確認 

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なぜトノサマガエルは観測されないのか 季節の生物が2020年に対象外に 松江で8年連続未確認 

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全国的に減少傾向のトノサマガエル(ホシザキ野生生物研究所提供) 1/1枚

 全国の気象台や測候所が季節に応じ、さまざまな動物や植物が「初めて鳴いた日」や「開花した日」などを公表している「生物季節観測」。よく話題になるのはソメイヨシノの「開花」やツバメの「初見」などだが、松江地方気象台は今季のトノサマガエルの初見を「欠測」と決めた。トノサマガエルは8年連続で観測できなかった。(小林宏之)

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生物季節観測は気候の進み具合を見るのが目的

 同気象台では、動物14種類と植物12種類を対象に初鳴きや初見、開花などの現象を観測している。動物の初見日の場合、積極的に探し回らず、気象台・測候所から半径5キロ圏内で定点を決め、自然に見つかった状況を記録している。

 同気象台では、トノサマガエル初見日の平年値は4月18日で、最も遅かったのは5月3日。だが、姿を確認できない事態が平成22年から続き、今年も夏を過ぎて欠測と判断した。当地方から、トノサマガエルが姿を消してしまったのか。

 「あくまでも気象台から半径5キロの話」と話す後藤章仁調査官。気象庁情報管理室も「生物季節観測は、動植物を指標にして気候の遅れや進み具合を見るのが目的。観測結果と生物個体の増減は直接には結びつけづらい」と説明する。

カエルが繁殖しづらい環境?

 一方で、水生生物に詳しいホシザキ野生生物研究所(島根県出雲市)の林成多研究員は「トノサマガエルの主な繁殖場所である水田の減少に加え、近年は稲作の途中で田の水を抜く『中干し』をする農家もあり、カエルが繁殖しづらい環境は増えている」と指摘。

 後藤調査官も「気象台周辺で田畑が減り、宅地が増えているのは確か」と話す。

 トノサマガエルの減少は全国的な傾向のようだ。

 気象庁によると、全国58の気象台・測候所のうち、トノサマガエルの初見を観測項目としているのは19。近年になり対象から外す施設が増えている。

 高松地方気象台が昨年、トノサマガエルを観測対象外に。「平成6年から欠測が続いていた」。徳島地方気象台は平成3年に除外。高知地方気象台は昨年から欠測が続く。

季節を代表するはずが…

 後藤調査官は「気象庁が平年値(30年間の平均値)を更新する平成32年(2020年)をめどに、トノサマガエルを観測対象から外す検討をしたい」と話す。季節を代表する動物として選ばれたはずのトノサマガエルが、身近な存在からどんどん遠ざかっていく。

     ◇

 ■トノサマガエル 本州の大部分、四国、九州、北海道の一部にすむ。池や沼、水田や用水路などを好むが、近年は水田の減少や圃場(ほじょう)整備、水路のコンクリート化などで生息範囲が狭まり、個体数が減る傾向にある。環境省は平成24年、「準絶滅危惧種」としてレッドリストに記載した。