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【東海の議論】「小学校庭で侵入グマ射殺」がなぜ非難される…児童の安全優先「やむを得ない判断」に“第3者”から反発の声

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「小学校庭で侵入グマ射殺」がなぜ非難される…児童の安全優先「やむを得ない判断」に“第3者”から反発の声

東海の議論更新
クマが出た栃尾小。市内ではクマの被害が相次いでいた=岐阜県高山市奥飛騨温泉郷栃尾 1/2枚

 パーン、パーン。自然豊かな山間の校庭に銃声が鳴り響いた。岐阜県高山市奥飛騨温泉郷の市立栃尾小学校(小谷好廣校長、児童64人)に9月、ツキノワグマが侵入し、駆けつけた猟友会メンバーが警察の指示のもとで射殺したのだ。当時は授業中で学校側は児童を教室で待機させ、児童や保護者にその都度状況を説明したため、大きな混乱はなかった。地元ではクマによるけが人も相次いでおり、今回の措置も「児童の安全を考えるとやむを得ない」との受け止め方だ。ところがネットや報道で騒ぎを知った県外の人から「小学校で射殺とは…」と非難の声が寄せられ、市や学校側は困惑している。

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校庭に迷い込んだクマ

 校庭でクマが見つかったのは9月6日午前11時半ごろだった。職員室の教職員が校庭を走る黒い動物を発見。周辺でもクマの目撃情報はあったが、学校の敷地に入ったことは一度もなく、松井健治教頭は「動きがとても速く、初めは黒い犬が入ってきたと思った」という。

 しかし、よく見るとクマだったため、すぐに110番通報し、教職員が手分けして校舎1階と体育館の全てのドアや窓を施錠。児童らを教室で待機させ、西隣の市立栃尾保育園にも事態を伝え、警戒を促した。

 通報の約10分後に県警高山署員や市職員、飛騨猟友会高山支部のハンターらが到着。一時、クマを見失ったが、その後、校庭南側の木に登り、高さ約3メートルの枝の上で何かを食べているのを発見。最初は爆竹で追い払うおうとした。

 「爆竹が鳴りますが、驚かないように」。学校は校内放送を流し児童らに知らせるとともに、保護者へも「クマが校庭に侵入し、警察の指導で校舎内に避難しています。安全は確保されています」とメール配信した。

 ところが約10分後、署員から連絡があった。「爆竹で威嚇するとクマが驚いて校舎の方へ逃げたり、隣の保育園や宅地へ向かう恐れがある。子供たちの安全を最優先し、射殺します」。署の判断だった。

 発見から約1時間後、猟友会のハンターが木に登っているクマに2発を発砲。息絶えて途中の枝でひっかかったクマを脚立を使って署員と猟友会員らが下ろした。クマは体長約1メートル、体重約100キロで、雄のツキノワグマの成獣だった。

学校での射殺、県外から批判が

 クマは射殺されたが、学校の対応はその後も続いた。射殺から約30分後の午後1時過ぎ、保護者へ児童全員の無事をメール配信。緊急の全校集会も開いて小谷校長が児童らに「尊い命が失われてしまいましたが、自然の脅威がみなさんの身近にある」と語りかけた。児童は皆一様に黙ったままじっと耳を傾けていたという。

 集会前に小谷校長が教職員らと協議し、「子供たちに嘘をつけない。安全を最優先して射殺された事実を伝えるべきだ」と判断したという。児童らはこの日、教職員が付き添って下校した。

 翌日も学校は児童の心のケアに細心の注意を払った。登校前に小谷校長は不測の事態も想定して職員室で待機し、松井教頭は徒歩通学の校区内を車で巡り安全を確認。他の教職員らは通学路に立ち、登校の児童を見守った。市教委もスクールカウンセラーの派遣の用意を伝えた。

 児童らに大きな動揺はなかったものの、今回の一件が報道やネットで伝わったため、学校や市にはクマを射殺したことに対する批判の電話が相次いだ。「麻酔銃を使う選択肢はなかったのか」「子供の目の前で射殺するなんて」「学校で射殺はいかがなものか」。こうした声だ。

写真ギャラリー

  • 校庭に入り込んだクマが登った木(左から3本目)=岐阜県高山市奥飛騨温泉郷の市立栃尾小