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【エンタメよもやま話】誰が音楽をタダにした? 特定された違法コピー第1号犯“ネットおたく”、MP3規格、業界のドン…意外な真実とは

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誰が音楽をタダにした? 特定された違法コピー第1号犯“ネットおたく”、MP3規格、業界のドン…意外な真実とは

エンタメよもやま話更新

 既に音楽ファンのみなさんはご存じだろうと思いますが、楽曲のデータを受信しながら同時再生する定額制のストリーミング型音楽聞き放題サービスの世界最大手で、2008年からサービスを開始したスポティファイ(本社・スウェーデン https://www.spotify.com/)が今年9月29日から遂に日本でもサービスを始めました。

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 4年前、2012年2月26日付の本コラム「1500万曲タダで聴き放題! 北欧生まれの音楽配信サービス『スポティファイ』日本上陸間近

 http://www.sankei.com/west/news/120226/wst1202260001-n1.html

でご紹介したように、この年から日本版の先行登録の受け付けを開始しましたが「成功を確実にするための4年間の入念な準備」(スポティファイ側)を経て、ようやく日本でのサービスをスタートさせました。

▼1500万曲タダで聴き放題! 北欧生まれの音楽配信サービス『スポティファイ』日本上陸間近

 というわけで、いまや世界中どこでも、音楽といえばパソコンやスマートフォンを使い、スポティファイのようなサービスで楽しむか、ユーチューブでタダ見・タダ聞きするのが主流になってしまいました。

 もはやCDは過去の遺物。かつて一世を風靡(ふうび)した米アップルの有料音楽配信サービス、iTunes(アイチューンズ)のような1曲ごとのダウンロード購入すら、すっかり時代遅れ…。

 科学技術の進化速度の凄まじい早さにあぜんとしてしまうのですが、ここでみなさん、ちょっと考えてみましょう。CDが過去の遺物になり、音楽の楽しみ方が全てウェブ上で完結するような味気ないものになってしまったのはなぜでしょう?。

 その答えはひとつしかありません。誰かがウェブ上にタダで音楽を垂れ流したからです。この忌まわしい海賊行為が全ての元凶なのですが、では一体、そいつはどこの誰で、いつからそんなことになったのでしょうか?

 この素朴かつ難解な疑問に答える強力に面白い1冊が登場したのです。「誰が音楽をタダにした?」(スティーヴン・ウィット著、関美和訳、早川書房、2300円+税 http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013326/)。今週の本コラムでは、このあまりにも面白過ぎる書籍についてご紹介したいと思います。

▼早川書房の『誰が音楽をタダにした?』紹介ページ http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013326/ (外部サイト)

“事実は小説よりも奇なり”そのもの…衝撃の展開、少し紹介すると

 もともと欧米では昨年6月に発売され大反響を呼んだ1冊で、昨年6月7日付英紙ガーディアン(電子版)などによると、本書の著者であるスティーヴン・ウィット氏は1979年、米北東部ニューハンプシャー州生まれ。シカゴ大学とコロンビア大学のジャーナリズム大学院を経て、シカゴとニューヨークのヘッジファンドで金融マンとして働き、2007年には自分の金融の知識で東アフリカの金融市場を活発化させ、経済を発展させようと、当地のNGO(非営利組織)のために一肌脱いだこともある変わり種です。

 しかし30歳の時、昔からの夢だったライターに転身。MP3(音楽データの圧縮技術とそのファイルのこと)の歴史について本を書こうと取材を進めるうち、音楽をタダにした張本人の存在にぶち当たり、大いなる衝撃を受け、約5年がかりで本書を書き上げたといいます。

 そんな経緯で書かれた本書は、3つの異なる物語を同時並行的に描き、なぜ音楽がタダになってしまったかについて丁寧かつ論理的に説明していきます。

 まずひとつは、MP3を発明した変わり者のドイツ人技術者カールハインツ・ブランデンブルク氏と、彼を中心とした「フラウンホーファー協会」(ドイツ全土に数多くの拠点を持つ巨大な公的研究機関)の技術者たちが、世界的な電機・家電大手でCDを開発したフィリップス(本社・オランダ)が裏で糸を引く新技術の標準規格決定委員会「MPEG」の露骨な嫌がらせをはねのけ、MP3を世界の標準規格として世界に認めさせるまでの物語です。

 CDの生産が始まったのは1982年ですが、実はその遙(はる)か以前から“音楽は将来、デジタルデータになり、中央のコンピューターサーバーから購入するようになる”と考えていた天才過ぎる科学者がいました。ブランデンブルク氏の師匠である科学者ディーター・ザイツァー氏です。

 なぜそう確信したか。ザイツァー氏の師匠で“音響心理学の父”と呼ばれた科学者エバハルト・ツビッカー氏は、人間の耳にはもともと構造的な欠陥があり、聞き分けられない音がたくさんあることを科学的に証明していたのです。

 そのためザイツァー氏は、CDに収められたデータから、人間の耳が聞き分けられない無駄な音のデータを取り除けば、楽曲のデータ自体を小さくでき、デジタルの電話回線で流せると考えたのです。

 ザイツァー氏はCDの生産が始まった82年“CDなんていずれなくなる”とばかりに、こうした自身の考えに基づく「デジタルジュークボックス」の特許を申請しました。しかし特許は通りませんでした。なぜなら、これを実現するにはCDのデータを12分の1にまで圧縮(=つまり減らす)ことが不可欠でしたが、そんな技術は存在せず“現実味がない”と一蹴(いっしゅう)されたのです。

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