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【衝撃事件の核心】「恥ずかしい画像ばらまくぞ」 日本に上陸した性的脅迫「セクストーション」 アプリで甘い誘い、寂しい男性が餌食

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「恥ずかしい画像ばらまくぞ」 日本に上陸した性的脅迫「セクストーション」 アプリで甘い誘い、寂しい男性が餌食

衝撃事件の核心更新

 スマートフォンの無料通信アプリで知り合った女性と裸の画像を交換した。やりとりを重ねるうちに電話帳などのデータを抜き取られ、女性の関係者から「恥ずかしい画像」をネタに現金を要求される-。もともとは海外で確認された「セクストーション」(性的脅迫)といわれる犯罪被害が日本にも上陸し、徐々に広がりつつある。今年に入り、兵庫県警にも複数の男性から相談が寄せられているが、男性は自ら性的な画像を送っているため被害を申告しづらく、表面化しにくいという。相手側に渡った画像やデータを取り返すことはほぼ不可能で、その代償は大きい。男性の心のすき間に入り込む悪質な犯罪の実態とは。

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抜き取られた電話帳データ

 「無料通信アプリで知り合った相手から、スマホの個人情報を抜き取られ、現金を払わなければ動画をばらまくと脅されている」

 兵庫県警サイバー犯罪対策課によると、今年3月以降、県内の複数の男性から、このような相談が寄せられるようになった。

 その手口はこうだ。

 「お話ししませんか」。ある日突然、男性のスマホに、無料通信アプリを使って見知らぬ女性の名前をかたる人物から連絡が来る。男性が応じると、たわいないやりとりが始まる。

 次第に会話はエスカレートし、女性から「恥ずかしい姿を見せ合いましょう」と持ちかけられる。

 さらに女性から「ビデオ通話ができるアプリ」をダウンロードするよう求められ、男性は自分の性的な動画を撮影し、このアプリを起動して動画を送信した。

 すると、間もなく男性のスマホの画面に「金できれいに解決しよう」との一文とともに、男性が登録している電話帳のデータの写真が送られてくる。そして、見知らぬ男から「電話帳を抜き取った。知り合いに動画をばらまかれたくなければ金を払え」と脅迫の電話がかかる-というもの。

 「ビデオ通話ができるアプリ」として男性がダウンロードしたのは、実際は電話帳のデータを抜き取ることができる不正アプリ。男性は気付かぬ間に、不正アプリを通じて電話帳のデータを盗まれ、プライベートなやりとりを行った際の動画データをネタに脅されるというのだ。

 捜査関係者は「相談しにくい被害だろうし、実際の被害者はもっと多いのではないか」とみている。

海外で広く認知 日本でも逮捕者

 被害者から性的な写真や動画を入手し、それをネタに脅迫して金銭を要求するセクストーションとは、「sex(性的な)」と「extortion(ゆすり)」を掛け合わせた造語だ。

 「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)」(東京)によると、こうした被害は、数年前から米国などで確認され始めた。2014(平成26)年にはフィリピンで、主に国外在住の高齢男性をターゲットに犯行を繰り返していた58人が逮捕されるなどしており、海外ではすでに広く認知されている。

 日本でも近年、IPAに被害相談が寄せられるようになり、セクストーションによる恐喝容疑での逮捕者も出ている。

 千葉県警は26年4月、不正アプリで男性のスマホから個人情報を抜き取り、現金を脅し取ったとして恐喝容疑で男2人を逮捕した。

 2人の逮捕容疑は25年12月、大阪府内の30代の男性に対し、無料通信アプリを通じて、スマホの個人情報を抜き取る不正アプリを送付。電話帳のデータを抜き取った後、女性を装ってわいせつな行為を見せ合うことを持ち掛けた上、動画を送信させて「知人にばらまかれたくなければ金を払え」と脅し、20万円を振り込ませたとしている。

 被害者が自身の性的な動画を送りつけていた相手は、異性ではなかった可能性がある。

恥ずかしくて相談できない

 相手が本当に出会いを求める女性であるかどうか分からないのに、なぜこうした被害に遭うのか。

 ITジャーナリストの三上洋さんは「実生活で異性との交流が少なく、出会いを求める男性が被害に遭いやすい。女性と知り合えたうれしさから、不用意なやりとりをしてしまう人が多い」と分析する。

 三上さんは2年ほど前から、10人以上の男性から相談を受けている。中には、現金を要求されたものの、恥ずかしさから警察や消費者センターに相談できず、駆け込んでくる人もいる。

 三上さんは「寂しい男性の心のすき間に入り込む悪質な犯罪。ただ、知らない人との無料通信アプリ上でのやりとりは詐欺の可能性が高く、疑うべきだ」と警告する。

データ取り返せない…「2次被害」

 「セクストーションの怖さは、その場で現金を脅し取られずに乗り切ったとしても、盗まれたデータが犯人の手元に残ってしまうところだ」と捜査関係者は話す。自分の恥ずかしい画像だけでなく、電話帳に登録していた知人や取引先などのデータまでが犯人に渡ってしまうのだ。

 また、実際に相手に会うことなく被害に遭うため、犯人側の顔も名前も声も、国籍さえも分からない。やりとりしていたのは、本当に女性かどうかも不明だ。送られてきた相手の画像も本人のものではない可能性が高い。

 捜査関係者は「この手の犯罪の場合、犯人側の情報が乏しく、取られたデータを取り返すことはほぼ不可能だ」と言い切る。その上で「自分のスマホにあるデータは自分だけのものではない。情報を漏洩(ろうえい)する側になってしまう恐れもあることを自覚して、簡単に甘い誘いに乗らないでほしい」と呼びかけている。