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【JR脱線事故10年】生き残った土田佐美さん、家族、生徒に感謝の10年 講演で伝える

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生き残った土田佐美さん、家族、生徒に感謝の10年 講演で伝える

JR脱線事故10年更新

 兵庫県尼崎市で平成17年4月、乗客106人が犠牲となったJR福知山線脱線事故で、最も犠牲者が多かった2両目で利き手の右腕を骨折するなど重傷を負った神戸市北区の書道講師、土田佐美さん(46)が21日、同区の児童館で講演を行った。「2両目で生き残った私には、体験を伝える使命がある」と、事故を語り継ぐ活動を続ける土田さん。講演では「感」の文字を披露し、この10年間を支えてくれた家族や書道教室の生徒らに感謝の気持ちを伝えた。

 17年4月25日、大阪で開かれる書道の指導者講習会に向かう途中で事故に遭った。気がついたときには担架の上で、当時の記憶は残っていない。右腕と後頭部の骨が折れるなど大けがをした。

 しかし、家族の支えもあって順調に回復し、約3カ月後に退院。リハビリに懸命に取り組み、再び文字を書けるようになった。同年11月には自宅の書道教室を再開。骨を固定するために入れたチタン製の棒はいまだ腕の中に残っているが、元通りの生活を送ることができるようになり、20年4月にはJR西日本の示談に応じた。

 一方、被害者として「事故を絶対に忘れてはならない」との思いから、自身の経験と事故を通して知った命の大切さを積極的に伝えていこうと決めた。

 土田さんの書道教室には小中学生ら約80人が通う。毎月配布する「教室だより」の4月号には20年以降、「平凡な日常こそかけがえのない宝物」などと自らの思いを添えるようにした。

 地元の児童館などで講演活動も行っている。この日は乳幼児の母親らに向けて「入院中は娘が病室の隅で泣いていても抱きしめられず、歯がゆかった」と事故の体験を語った土田さん。「事故をきっかけに、普通に生活を送ることができることのありがたさを感じることができるようになり、家族の絆も深まった」と話した。