産経ニュース for mobile

【クローズアップ科学】南海トラフ地震予測で新体制 不確かな情報、防災にどう生かす

記事詳細

南海トラフ地震予測で新体制 不確かな情報、防災にどう生かす

クローズアップ科学更新
南海トラフ地震予測で新体制 1/2枚

 近い将来の発生が予測される南海トラフ地震について、直前予知に頼らない新たな防災対応が今月から始まった。気象庁は異常現象などを観測した場合、大地震発生の可能性が高まったとして臨時情報を発表するが、住民避難などの対応は未定で課題は多い。(小野晋史)

<< 下に続く >>

M7で臨時情報

 静岡県から宮崎県沖にかけて延びる南海トラフではフィリピン海プレート(岩板)が陸の下に沈み込んでおり、マグニチュード(M)8級の東海、東南海、南海地震が繰り返し起きてきた。全域が同時に動くと東日本大震災を超えるM9・1の巨大地震となり、強い揺れや大津波で甚大な被害が想定されている。

 従来の防災対応は東海地震だけを対象に予知を目指すものだった。新体制では南海トラフ全域に対象を拡大する一方、予知ではなく「地震発生の可能性」というあいまいな情報を発表するのが根本的な違いだ。

 巨大地震の想定震源域でM7・0以上の地震や異常現象が観測された場合、気象庁は地震学者らで構成する評価検討会を開催。M8以上の大地震につながるかどうかを議論する。

 発生した地震がM7・0以上なら、南海トラフ地震とは異なるタイプでも検討対象とする。異常現象は、東海地震の前兆となる地殻変動を監視してきた「ひずみ計」という観測装置のデータ分析が中心だ。M6級でも、ひずみ計に大きな変化があれば議論する。

 大地震が発生する可能性があると判断した場合、気象庁は約2時間以内に「発生の可能性が平常時と比べ相対的に高まっている」などの表現で臨時情報を発表し、国民に警戒を促す。

自治体に戸惑い

 問題はこの情報を防災にどう生かすかだ。新体制では大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく予知体制とは異なり、住民避難や交通規制などを伴う警戒宣言は発令されない。津波の恐れがある沿岸部で高齢者などが事前に避難するといったケースが想定されているが、具体的な対応をどうするかはこれからだ。

 政府は防災対応の指針を作成するため、名古屋市を中心とする中部経済圏と静岡、高知両県をモデル地区に指定。これを受け静岡県は年内にも初会合を開き議論を始めるが、従来との違いに戸惑いを隠さない。

 県の防災担当者は「警戒宣言は地震が起きるのが前提だったが、臨時情報が出ても地震は起きないことの方が多いだろう。不確かな情報にどう対応するのか事業所や学校などと話し合うが、現状は白紙に近い」と打ち明ける。

写真ギャラリー

  • 南海トラフ地震の評価検討会会長を務める平田直・東大地震研究所教授