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【政界徒然草】暗躍した「野党清和会」 参院選挙制度改革で安倍首相に助け船 次は安保法制で共闘か

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暗躍した「野党清和会」 参院選挙制度改革で安倍首相に助け船 次は安保法制で共闘か

政界徒然草更新

 参院の「一票の格差」是正に向けた改正公職選挙法は、4県2合区を含む「10増10減」で決着した。自民党は合区に反発する党内の調整に難航し、業を煮やした連立与党の公明党と決裂。間隙を縫う形で、安倍晋三首相に近い元自民党の野党議員らが首相に接触するなどして外堀を埋め、自民党に案を丸のみさせた。首相とその20年来の“朋友”によるこの新たな枠組みは、今国会最大の焦点である安全保障関連法案の参院審議にも影響する可能性がある。

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 改正公職選挙法は先月28日の衆院本会議で、来年夏の参院選まで約1年となるギリギリのタイミングで成立した。この直前、参院平和安全法制特別委員会の休憩中に本会議へ向かう首相は、国会内で新党改革の荒井広幸代表と出くわすと、左手をあげて無言で笑顔を向けた。

 荒井氏は、平成5年7月の衆院選で初当選した首相の同期。かつて安倍首相と同じ自民党の「清和政策研究会」(清和会、現細田派)に所属し、離党後も良好な関係にある。その荒井氏が、今回の参院選挙制度改革で黒子役を買って出た。

 5月下旬、参院の選挙制度改革をめぐり、参院自民党執行部は都道府県単位の選挙区制度維持を主張し、合区導入に前向きな他党と対立。荒井氏は議論の停滞を懸念し、自民党案の「6増6減」に4県2合区を加えた独自の「10増10減」案を各党に伝えた。

 この間、荒井氏は5月28日と6月2日に首相と食事をともにした。「早く参院選挙制度改革をやらないと国民の信用が得られない」と進言する荒井氏にうなずく首相。荒井氏は産経新聞の取材に「首相とはいつも、あうんの呼吸だ」と語った。

 荒井氏が最初に共闘相手に見据えたのは、第1次安倍政権で首相秘書官を務めた日本を元気にする会の井上義行参院国対委員長だ。5月下旬に水面下で案を伝え「首相を守る」との認識で一致した。井上氏は、首相に火の粉がかからないよう、首相に10増10減についての賛否をあえて尋ねず、しばしば、電話で進捗状況だけを伝えた。

 荒井氏は、6月初旬には、参院経済産業委員会で隣に座った次世代の党の中野正志参院国対委員長とも共闘を確認した。次に3人が目を付けたのが、維新の党だ。衆参で影響力を持っているほか、民主党との野党分断につながるとの思惑もあった。

 窓口となったのは、森喜朗元首相の秘書経験もある柴田巧参院国対委員長。この4人の参院国対委員長には、「清和会」という共通項がある。荒井、中野両氏は自民党清和会の衆院議員出身。清和会は井上氏が仕えた安倍首相、柴田氏が仕えた森元首相の出身派閥だ。4人で集まると「みんな清和会だね」と笑い合い、他党からは「10増10減は清和会案じゃないか」との声もあがった。

 4人は当初、自民党への説明として同じポストということで額賀派の吉田博美参院国対委員長と交渉した。しかし、吉田氏は「選挙制度は私じゃない」と語り、清和会所属の岩城光英参院副会長が窓口となったことも、事態の進展を加速させたようだ。

 最後の仕上げは、かたくなだった参院自民党執行部の取り込みだが、そもそも、10増10減案に盛り込まれた4県の2合区は、来夏の参院選で自民党現職が競合しないという点で、「自民党が飲める案」(維新幹部)だった。

 4人は自民党に案をのませる時期も図った。4党は6月8日に10増10減案で合意したが、この時は大胆な合区にこだわる公明党と自民党の決裂が決定的になったタイミング。「落としどころを用意したうえで、合意もタイミングを計ったものだった」(元気会幹部)という。

 流れが決定的になったのは、6月17日の党首討論だ。自民党の溝手顕正参院議員会長は直前に4党幹部と会談し、「党首討論で、首相から公選法についてなんらかの発言がある」とつぶやいた。溝手氏は前日に首相と面会し、4党案を検討するよう指示を受けたとみられる。

 つぶやきを聞いた幹部は「自民党は案を丸のみする」と確信した。実際、首相は党首討論で、維新の松野頼久代表の質問に対し、10増10減案を「傾聴に値する」と評価してみせた。荒井氏らの作戦が結実した瞬間だった。

 現行制度のまま来夏の参院選に突入すれば、自民党は無責任のそしりをまぬがれず、自民党トップの首相が追い込まれる場面も想像できた。「野党清和会」のチームワークが首相の助け船になったともいえる一方で、「首相や衆院の自民党幹部が案を用意し、荒井氏らを使って参院自民党をねじ伏せたのでは」(民主党幹部)との憶測も絶えない。

 さらに4党幹部のひとりは「安保法案でも、この枠組みを使い、強行採決にならない形を作りたい」とも語る。山椒は小粒でもぴりりと辛い-。一強多弱といわれるなか、参院は、少数政党こそ、要注目かもしれない。

(政治部 沢田大典)