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【開発ヒストリー】ペダルとブレーキがない二輪車「ストライダー」 子供と遊びたい「イクメン親父」の心つかんだ「豆魚雷」

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ペダルとブレーキがない二輪車「ストライダー」 子供と遊びたい「イクメン親父」の心つかんだ「豆魚雷」

開発ヒストリー更新

 ペダルとブレーキのない米国生まれの二輪車「ストライダー」に、育児を楽しむ“イクメン”の父親らがはまっている。世界累計販売台数は2月に100万台を突破し、うち約30万台が日本で売られている。子供の成長に感動し、プラモデルのように部品の選択・組み立てをしたりして親子のきずなも深まると好評だ。

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米国生まれ 手探りの日本市場開拓

 ストライダーは、無駄をそぎ落としたシンプルなデザインが特長で、重量は3キログラム。超軽量で、子供でも両足がしっかり地面に踏ん張れるため、ブレーキがなくても止まれる。転倒時にハンドルがロックされて子供に衝撃が加わることが避けられるよう、ハンドルが360度回転する設計とした。

 「子供には外で元気に遊んでほしい」

 玩具・書籍の輸入卸売業などを手掛ける豆魚雷(東京都杉並区)の岡島和嗣社長は、親にスマートフォンを与えられた子供が室内で遊ぶ姿を見て、「子供とモノとの間だけで完結してしまい、親など他者が入り込む余地が少なくなっている」と、漠然とした不安を感じていた。

 そんなとき、米国でストライダーが販売されていることを知り、当時2歳の長男に買い与えた。最初はサドルにまたがったままでよちよち歩きだった長男が、1週間程度で地面から両足を離して乗るようになった。転んでもまた立ち上がって乗り出す姿を見て、岡島氏はワクワクし「たくましく思った」という。

 子供の遊び方に「自分と同じような不安を抱える親にもこの感動を伝えたい」と、すぐに米ストライダースポーツインターナショナルに電子メールで直談判。平成21年8月、日本で唯一の正規輸入代理店「ストライダージャパン」の地位を獲得した。

 当時、日本ではストライダーの知名度はほとんどなく、「流通経路の開拓もゼロから」(岡島氏)という手探りの状態だった。自転車販売店に営業に行ったとき、「何ですかこれ?」とけげんな顔をされたこともあった。

日本だけで30万台販売

 「バランス感覚を育てることができる」「ブレーキがない理由」など、岡島さんはストライダーの利点を自社のホームページで詳しく説明。横浜市内で雑貨店をしていた先輩が取り扱ってくれたことなどをきっかけに、「おもしろい乗り物がある」などと、口コミやメディアで話題となった。子供の外遊びの時間が少ないことや、体力の低下が社会問題となっていたことも後押しとなり、国内の累計販売台数は22年度の約2万台から25年度に約20万台と急速に増えた。

 ストライダーというモノを売る発想ではなく、親と子供が一緒に楽しめるコンテンツとして市場に訴求したこともヒットの要因だ。 バイクやプラモデルなどが好きな日本の父親の趣味にも着目。米国本社に要請してハンドルやホイールなどの部品の色を増やしてもらい、19万通りの組み合わせができるようにした。岡島さんは「父親が工具を使ってハンドル交換した日には、子供は『パパ、かっこいい!』となる。父親としての腕の見せ所」と狙いを明かす。

 また、“世界最年少の二輪レース”とうたい、22年に2歳から出場できる「ストライダーカップ」を日本で初めて開催した。26年には4カ所で開き、計約2000人が参加した。「小さい子供だからこそ見せてくれる、さまざまなドラマもある」(岡島さん)。親にとっては、子供の成長を感じる有意義なイベントとなっている。

世界最年少二輪レースも開催

 25年12月に発売された「ストライダープロ」は、主要部品に軽量アルミを採用し、従来品に比べ800~900グラム軽くすることに成功した。岡島さんは「『シンプルで軽く』のコンセプトをそのままに、さらに進化してほしい」と期待している。(鈴木正行)

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 ストライダー 米国に住むライアン・マクファーランド氏が2歳の息子のために市販の自転車を改造して作ったのが始まり。英語の「STRIDE」(ストライド、大またに歩く)が名前の由来。ペダルとブレーキがなく、足で地面をけって進むため、バランス感覚の向上にも役立つ。2007(平成19)年に米国で発売され、現在は世界93カ国・地域で事業を展開している。対象年齢は2~5歳。色は青や緑、赤など計7色。価格は9900円(税別)。