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「1冊も本を読まない」…47・5% 文化庁調査で「読書離れくっきり」

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「1冊も本を読まない」…47・5% 文化庁調査で「読書離れくっきり」

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ノーベル文学賞の発表を前に、村上春樹氏の著作専用コーナーを設けた都内の書店。村上作品の人気の陰で、実は1カ月に1冊も本を読まない人が日本人の半数に上っている=10月9日夜、東京都世田谷区のTSUTAYA三軒茶屋店(栗橋隆悦撮影) 今年のノーベル文学賞は村上春樹氏が受賞するかどうか注目されたが、残念ながらまたも受賞はならなかった。「ハルキスト」の加熱ぶりはこの時期の風物詩のようになっているが、実は最近の日本人の読書量は減少している。文化庁が実施した「国語に関する世論調査」によれば、1カ月に3冊以上の本を読むと回答した割合は17・9%で、「読書量は減っている」と考える人が65・1%に上った。専門家からは日本文学の低迷を懸念する声も。村上氏に続く世界的な作家を輩出するためにも、読書習慣の定着に向けた取り組みが必要だ。

すべての年代で「読まない」増加

 文化庁の「国語に関する世論調査」は、全国の16歳以上の男女3000人を対象に実施。電子書籍を含む読書量の変化などについて今年3月にアンケートを行い、集まった回答を半年かけて分析した。

 それによると、マンガや雑誌を除く1カ月の読書量は、「1、2冊」と回答したのが34・5%、「3、4冊」は10・9%、「5、6冊」は3・4%、「7冊以上」が3・6%だったのに対し、「読まない」との回答が最も多く、47・5%に上った。

 平成21年実施の前回調査に比べ、1冊も読まない割合は1・4ポイント増加、14年実施の前々回調査からは10ポイント近く増加しており、日本人の読書離れが浮き彫りになった格好だ。

 とくに高齢者に「読まない」割合が高く、70歳代以上で59・6%、60歳代で47・8%に上った。一方、20歳代は40・5%、10歳代(16~19歳)は42・7%だった。

 文化庁によれば、高齢者の場合、視力の悪化など健康上の理由が大きいとみられる。とはいえ、14年実施の調査に比べ、すべての年代で「読まない」割合が大幅に増えているのも事実。文化庁関係者は「21年実施の調査で国民の読書量の減少が明白となったが、その後も改善されていない」と憂慮する。

1冊でも読めば魅力が分かる?

 読書量の減少は、国民自身も認識しているようだ。「以前に比べ(自分の)読書量は減っている」と答えた割合は65・1%、「それほど変わっていない」は26・3%、「増えている」は7・4%にとどまった。

 減少の理由について聞いたところ、最も多かったのは「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」の51・3%、次いで「視力など健康上の理由」が34・4%、「(携帯電話やパソコンなど)情報機器で時間が取られる」が26・3%、「テレビの方が魅力である」が21・8%-など。

 このうち「情報機器」を理由とした回答は、21年実施の調査に比べ11・5ポイントも増加した。

 興味深いのは、1冊でも読んでいる人と、1冊も読まない人との意識の違いだ。「自分の読書量を増やしたいと思うか」との質問に、1カ月で1冊以上本を読んでいる人の77・1%が「そう思う」と回答。しかし1冊も読まない人は54・5%にとどまった。逆に、「増やしたいとは思わない」との回答は、読んでいる人では22・6%だったのに対し、読まない人は2倍の44・7%に上った。

日本文学が低迷?

 文化庁の調査結果について、日本大学の田中ゆかり教授(日本語学)は「日本人に限ることではないだろうが、近年はインターネットなどの普及により、細切れの情報を短時間で取得する風潮が一般化している。一方、小説をはじめとする紙媒体の書物は、練り上げられた文章を時間をかけて読むことが求められ、結論を急ぐ現代人の感性には、合わなくなってきている。読書量の減少は、ある意味、時代の必然といえるかもしれない」と分析する。

 立教大学の藤井淑禎(ひでただ)教授(近現代日本文学)は「戦後復興から高度成長期にかけて、いわば名作ブームと呼べる時期があり、国民を勇気づけるような古今東西の名作群がむさぼり読まれた。しかし今は娯楽的な読書が中心で、作品自体も、小説でいえばもっぱら筋の展開が中心の、軽口のものが大勢を占めている。こうした事情も、人々を読書から遠ざける一因となっているのではないか」とし、日本文学の低迷に警鐘を鳴らしている。

村上春樹氏に続け

 読書習慣の定着については、国も積極的に取り組んでいる。とくに子供たちの読書活動について文部科学省は「言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」(同省ホームページ)と強調。平成14年以降、3次にわたり「子ども読書活動推進基本計画」を策定し、家庭における読み聞かせ教育の推進や、小・中・高校での朝読書の普及、公立図書館の整備などに努めてきた。

 だが、インターネットをはじめとするさまざまな情報メディアの発達・普及により国民の生活環境が変化し、読書習慣が定着するどころか、ますます読書離れが進んでいるのが実情だ。

 文化庁の調査とは別に、全国学校図書館協議会が平成24年度に実施した学校読書調査によると、1カ月に1冊も本を読まない子供の割合は、小学生で4・5%、中学生で16・4%、高校生で53・2%と、年齢が高くなるにつれ読書離れが顕著になっている。

 こうした中、文部科学省では読書習慣の定着に向けた新たな施策を検討している。小学校時代は本を読んでいたのに、高校になるとなぜ読まなくなるのか、原因分析の全国調査を年内にも実施し、新たな施策に反映させる方針だ。

 文科省幹部は「たんに本を読めというだけでは、定着にはつながらない。読書によって人生が豊かになるという実感を持たせ、自ら進んで読書するような環境づくりを、官民が連携して進める必要がある」と話している。

 村上春樹氏に続く日本人作家のノーベル文学賞候補を今後も生み出せるかどうか、読書習慣の定着がカギを握りそうだ。

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