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【半島有事 起こりうる危機】邦人救出を阻む法の壁 国会の不作為

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緊迫 朝鮮半島

邦人救出を阻む法の壁 国会の不作為

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 韓国との国境に近い九州・山口は、半島有事が起きれば、大きな影響を受ける。だが、万一を想定した国や自治体の動きは鈍く、韓国にいる邦人待避の計画すらできていない。壱岐・対馬フェリーのような民間企業が自前で備えている状況であり、こうした「善意」すら、法の壁が阻んでいる。

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 外務省によると、韓国には短期観光旅行も含め約6万の日本人がいる。

 この日本人を、どう救出するか。釜山港から船で、最短約50キロの対馬への避難が、一つのルートとなる。

 輸送力確保について、国土交通省の見通しは立たない。数万人という規模に、短期間で対応するには民間船舶にも頼るほかない。だが、戦時に乗務員の安全をどう確保するか、万一の場合、どう補償するかの議論も必要だ。船員組合の反対も予想される。

 貨物船を旅客船に転用し、内航船で国境を越えるには、関係法令や諸規則が壁となる。

 また、受け入れ側での混乱も予想される。

 対馬でフェリーが接岸できる比田勝(ひたかつ)と厳原(いづはら)両港の近くには、それぞれ1千人程度を収容できる体育館はあるが、数千、数万人となれば受け入れられない。住民に加え避難者を想定すれば、水や食料の備蓄も足りない。

 対馬市総務課の担当者は「国から具体的な指示がなく、受け入れ計画の立てようもない。避難者や難民が押し寄せた場合の対応は、そのとき考えるしかない」とこぼした。

 国の動きが鈍い中で、長崎県は動き出した。県危機管理課の青木広治参事(国民保護等担当)は「これ以上は待てない。国や対馬市の意見を聞きながら、邦人退避マニュアルのたたき台を早急に作る」と語った。

 青木氏が気にかけるのは、韓国側の出方だ。自衛隊への反感から、韓国政府は、邦人救出を目的にした自衛隊派遣に同意していない。

 壱岐・対馬フェリーの真崎越郎社長は「超法規的でも、退避作戦に協力したい」と語った。裏を返せば、有事を想定した日本人を救出する法律が未整備ということだ。政府・国会の不作為といえる。

 国民の生命・財産を守るために最善を尽くすのは、与野党問わず、国会議員の義務だ。今は「もり・かけ問題」などやってる場合ではない。政府が進めないなら、議員立法でもよいから法整備を急ぐ必要がある。(村上智博)

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  • 壱岐・対馬フェリーが運航する「みかさ」=福岡市中央区